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六、運命交差 ①
Side:津々村利圭
俺の電話はワンコールで出るように命令していた。
忠実な犬である生徒会長は、俺の電話を当然ワンコールで取った。
『どうした?』
「どうした、じゃねえよ。ふざけんな。今すぐ来い」
『面会時間はもう終わってるだろう』
「お前の家の病院だろ。来ないならまた俺が行方をくらませると思え」
通帳を壁に投げつけながら、下僕である生徒会長へ一方的に怒鳴りつけて電話を切った。
副院長と契約したはずの金額が振り込まれていない。
正確には、一桁少ない数で振り込まれていた。二万じゃ何もできねえっての。
こいつら、自分の息子が何したか全くわかってねえじゃん。
俺の青春も、将来も全部奪っておいて。
家族も失ったし、男としてもプライドも壊された。それがたったの月二万で癒されるとでも思ってんのかよ。屑どもが。
「明日退院が決まったみたいだな」
沖沼病院は街を見下ろすかのように丘の上に建っているが、その麓に豪邸があるので、数分で俺の病室へ着いてしまった。
「俺はお前と仲良く会話するつもりで呼んだんじゃねえよ」
「そうか。あとこれ、君が休んでいる間のノートをまとめておいた」
テーブルに置いたノートを、ベットから飛び出して叩き落とした。
「いらねえよ。学校なんか行かなくても、お前ら沖沼家が俺に金を振り込むんだからな」
「……その件か」
「性病の件かと思った? お前は陰性で良かったじゃねえか。散々俺のちんこ舐めて、粘膜接触したのによお」
俺だって塗り薬塗って二日目。自覚症状もない最初の時期だったから数日で治るらしいが、今俺が問題にしているのはそのことではない。
「金だろ。俺とお前の関係は金。どうなってんだ」
「二つ返事したはずだ。ちゃんとカウンセラーと話してほしいと」
……言ったっけ。
なんかそんな話はしたような。
「君は学校に行かなくても、俺と結婚してくれたら一生は保証するが、だが知識は身につけておいて損はない」
「うるせえな。もう用はねえから、帰ってどうぞ」
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