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六、運命交差 ⑤

 利圭の住んでいる家へ向かうと、佐伯さんと利圭がちょうど入り口で話し合っているところだった。 「利圭、退院おめでとう」 「壮爾っ」  ぱあっと花が咲いたかのように笑顔になった利圭が、カンカンと錆びた鉄の階段を降りてくる。まだ少し体重が戻っていないのか、身体のラインが細くなったように思えた。 「今から佐伯のおっさんのバイク屋の庭で、俺の退院祝いするってよ」 「あ、そうなの。今、何か話してなかった?」 「えー、うん。このボロッちいアパートでもさ、家賃あるからさ。佐伯のおっさんが払うって言うから断ってたんだよ」 「え」 「あのバイク屋、借金だらけだしよお。でもオヤジの荷物は整理したくないし、ここの家賃は払える見通しがあるって言ってるのによお」  まだ未成年である利圭が払える宛があると言っても、確かに信じられるものではない。  佐伯さんも熊みたいな巨体で頭を掻きながら降りてきた。 「ガキは話にならねえな。まあいい。まずはそのマッチ棒みたいな身体を太らせるか」 「マッチ棒とかウケるんだけど。んなもん見たことねえよ」  僕に抱き着きながら笑う利圭は、確かに軽くなっていた。  マッチは言いすぎだけど、心配なぐらい痩せたのは事実だ。 「肉数キロ買ったらしいぜ。制服に焼き肉の匂い付かないように、シャツに着替えよう」  利圭が貸してくれたのは『定時で帰りたい』という社畜Tシャツ。利圭も『ようふく』と書かれた黒Tシャツを着ている。  バイク屋は店の中にレトロなバイクから最新のバイク数台が並び、その裏に小さな工場があり、主に修理を請け負っているようだった。  工場の方からつなぎを着た社員が数人、バイクを囲んで話していた。  工場の前に整備されていない駐車場があり、そこにすでにバーベキューの用意がされている。  利圭は工場の外に設置されている水道でジュースを冷やしだした。  佐伯さんは炭に点火している。 「あのう、僕もなにかお手伝いできることありますか」 「あー……壮爾くんだっけ」  佐伯さんは利圭の背中を確認しながら少し小声で話し出した。 「征一郎と利圭って、どうなってんだ」  それは意外な言葉だったので面食らってしまった。

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