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六、運命交差 ⑨

「そんな話は聞きたくないっ」  紙皿に網の上からお肉を取るとまだ半焼けだったので、持ったまま固まる。 「壮爾は真面目だから。一回開放したら楽だって。どうせ俺らはもうまともな恋愛も、夢みれねえんだから」  牛肉は半生でも問題ねえよと利圭が僕の手を掴み、肉をタレの中に誘導するとそのままかぶりついた。  無邪気に動く利圭の首筋には、やっと薄れてきたようなキスマーク。  ……利圭にこんな考え方をさせてしまった生徒会長が憎い。  事故だって認めなきゃいけないのが苦しい。  でもきっと。  沖沼くんは今、必死でやり直そうと頑張っている。それも拒絶したいのに歯がゆかった。 「今日は壮爾の家に泊めてもらおうかな」 「脈絡もないな。いいけど」 「沖沼の野郎に退院祝いにゲーム機買わせたから、一緒にしよう。対戦できるやつ」  お肉を口いっぱい頬張ったあと、佐伯さんの車の中からカバンを持ってきた。  中には新品の、まだ箱に入ったままのゲーム機が二体。  ゲームソフトも用意されている。……ニュースで、フリマアプリで高額転売されていると話題になった人気ゲーム機だ。 「金持ちはいいな。こんなの、すぐに用意できるんだから。転売品は買うなって言ったから、権力使って正規ルートで買ったんだろ」  利圭はただ興味本位でほしかっただけで、生徒会長を困らせるのが楽しいだけの様子。  これはこれで利圭の人格がゆがまないか心配になる。 「な。いいだろ」  でも利圭が二度と壊れれてほしくない僕は、彼の小さな歪を見逃した。 これぐらいなら大丈夫だ。気にする範疇ではない、と。

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