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2.3
少し離れたコインパーキングまで颯爽と歩いていき
車の横でようやく俺を下ろした。
「すみません」
頭を下げると九条さんは無表情で 乗って、
と指示する。
言われるまま 黒いランクルに乗り込んだ。
ー 流されてついて来ちゃったけど
大丈夫かな…。
「家どの辺?」
「北区の方です」
「遠っ」
言いながら九条さんが笑った。
ミディアムで少し長めの前髪を耳にかけて
車を発車させた。
運転する九条さんを眺めていたら
外気にあたり、少し覚めていた熱が
また蘇ってきて、あわてて目を反らした。
「薬持ってないの?」
「……はい」
「Ωって普通、皆 持ち歩かない?」
「俺、薬効かない事なんてなかったし…」
「こんな事もあるから
これからは、ちゃんと持ち歩けよ」
「はい……」
「て、ゆうか…おまえ名前何だっけ?」
「根岸です…根岸和真 …」
「あーそうだ、そうだ。
和真って呼ばれてた」
「く、九条さん、、でいいんですよね?」
「おお、九条 蓮 な」
そう言って一瞬だけ目を合わせて笑った。
彫刻みたいにキレイな顔がくしゃっとなって
少年のような顔になる。
それを見ただけで心臓が早くなるのを感じた。
ー ぁぁ~本当にヤバイ。さっきのキスのせいだ。
下半身が熱い、重い。
「…いいかげん、ヤバイな」
九条がボソッとつぶやいた言葉が
自分の心の声を代弁したようで、ドキッとした。
返事に困って黙っていると
車はホテルの駐車場に滑り込んだ。
「!?…あ、の?」
「ついたよ」
車を停めて、九条さんはさっさと自分の
シートベルトを外した。
「ほら、お前の家まで我慢できないから
ここに泊まろう」
ー 我慢って何だ!?
「いや、無理です!帰ります!」
「無理はこっちだよ
このままじゃその辺の暗い道で停めて
車内でやっちゃいそうだ」
その言葉を聞いて心底ゾッとした。
ー あの噂は本当だったんだ
誰でも食っちゃうって…!
優しい顔に騙されてノコノコついてきてしまった。
絶体絶命だ!
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