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3.2
全然抵抗する気にならない。
朝っぱらから起き抜けに何してるんだと思い
ながらも
後ろに手を伸ばして九条さんの首を捕らえて
まさぐると 九条さんが俺の耳を口に含んだ。
「で、出る、出ちゃうっ…」
バスローブの中にダラダラ白い液を溢した。
「はぁ、はぁ…スゲ…」
呼吸を整えている俺の顔を捕らえて後ろに
向かせて、唇を吸われた。
タバコの匂いと、乾いた唇が触れあって
お世辞にも気持ちいいとは言いがたいキスも
もっとしたい気持ちになるのはなぜだろう。
「いい声に なってきたな…」
俺をぎゅっと抱き締めたままそう言われて
恥ずかしさで熱くなった。
・
・
結局最後まですることはなく、俺たちは
ホテルを出た。
「ファミレスでも寄りたいとこだけど
それだけフェロモン垂れ流してたら
とても外、出せねぇな」
車に乗り込んで少しずつ窓を空けた。
「す、すみません」
「コンビニ寄ってなんか買って帰るか
欲しいものあったら言えよ、買ってくる」
「あ、大丈夫です」
九条さんがハンドルをきりながら俺をチラッと
見た。
「お前、実家?」
「いや、一人暮らしです」
「……食べるもの、家にあるの?」
「 …… あんまりない…けど」
信号で止まったところで九条さんが露骨に
にらんでくる。
「その状態で出歩くの自殺行為だぞ
とりあえず出なくても済むように
なんか買っとけよ。デリバリー頼むのだって
来た奴に Ωが住んでるってバレるぞ」
「怖いこと言わないで下さいよ」
「怖いのはこっちだよ。昨日だってお前、よく
飲み会なんて出れたよな。トイレ連れ込まれて
やられても、Ωに誘われたって言われて
終わりだぞ」
ー ホテルに連れ込んだ人の言うセリフかな…
「今までこんなことなかったんですよ
薬飲んどけば何事もなく…
そういえば…今さらですけど、
九条さんってαだったんですね」
九条さんは、ホントに今さらだな、と笑った。
「……とりあえず土日は家にいろよ
月曜も状況に寄っては休んだ方がいい」
「…はい」
九条さんは口の端で笑うと、前を見たまま
片手をそっと伸ばして俺の頭を撫でた。
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