31 / 122

5. ハナセナイ

「1回換気していいですか?」 狭い部屋はエアコンが効きまくり寒いほどだった。 その中で、お互いのフェロモンやセックスの 匂いが籠っていて、このままでは、また おかしくなりそうだ。 「おまえ、ずっと窓も開けずに籠ってただろ 俺来たときスゲー匂いだったぞ」 「いや、日中は時々開けてたんですよ でも薬のせいか夢うつつで…寝ちゃって 寝てる時は窓開けとくの怖いし…」 言いながら寝室もリビングも窓を全開した。 「…そっか」 「ゼリー食べていい?」 「食え食え」 思ってたゼリーと全然違った。 でっかいフルーツが丸ごと入ってたし 見た目もなにやらお洒落で綺麗だ。 朝からまともに食べてなかったせいか 胃に染み渡る美味しさだった。 「っあ~!めっちゃうまい! もう一個食べていい?」 「だろ?食え食え!」 九条さんも一緒に食べていたけどゆっくりだ。 俺みたいにガツガツしてない。 「九条さん…ゼリーって食べ物が似合わない ですね…」 「なんだソレ!」 「なんてゆうか、体に悪そうな物しか 食べてなさそう…」 「おい、こら、おまえも大概 不健康そうだからな」 「えっ!そんな事ないでしょ 健康気にしてサプリとか飲んでそうでしょ」 「飲んでんの?」 「飲んでないけど…あ、桃めっちゃ旨い!」 「ッフ…」 「…何?」 「いや、急によくしゃべんなって思って」 目を細くして、優しく笑われると 顔が熱くなった。 「スミマセン…久しぶりに人と話して テンション上がっちゃって…」 「バカ、違う。謝るとこじゃないだろ 元気になってホッとしたんだよ」 優しい言葉をかけられると、何だか照れて 何と返したらいいか分からなくなる。 俺は目を反らしてスプーンを噛んだ。 「近くに親居ないの?回りにβって言ってたら こんな時頼れるのは親兄弟ぐらいだろ?」 「いないですね…俺一人っ子だし…」 「…そっか」 九条さんはそれ以上家族の事を聞いて来なかった。

ともだちにシェアしよう!