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「泣くなよ」
「いや、ホント泣いてないです」
涙は止まっていた。
「…泣けよ、つまんね~」
「どっちなんすか」
二人でクスクス笑った。
「あ、携帯」
九条さんがポケットから携帯を出す
「教えとく。なんかあったら連絡しろよ」
連絡先を教えてもらって少し気持ちが上がった。
「本当にウチ来ない?」
「ップ…行かない」
九条さんは了解、と笑ってやっと俺を離した。
「じゃぁな、ちゃんとメシ食えよ」
「はい」
「ここでいいから。ちゃんと鍵閉めろ」
「はいはい」
九条さんが帰ったら急に部屋が暗くなった
気がした。
窓を閉めて、カーテンをして、エアコンを
つけた。
そのままベッドに寝転がる。
下半身が重くダルい。
ー ああ…本当にやっちゃったんだ
下腹部に手を当てて目を閉じた。
仄かにポッと温かい。
あの身体中焼けつくような暑さも
延々続くと思われた疼きもすっかり消えた。
ー 全部九条さんが持ってってくれた
Ωという性を否が応にも実感した。
何度出しても落ち着かなかった体が
やっと大人しくなった。
満たされたんだ。
今日はゆっくり眠れる。そう思った。
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