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「ホントは全部俺が食わせたいんだよね~
一口、一口あーんって…和真やらせてよ」
「い、ぃ、やだよ!キモい」
「ハハハ、失礼だな」
「他にやらせてくれる人いるんじゃないですか?」
思わず言ってしまった。
でも九条さんは気にしてないみたいだった。
「いるかもねぇ…でも誰でも食べさせたい
訳じゃないんだよねぇ」
そう言って俺の事を舐めるように見る。
「……食いにくいからやめて!」
音をたててスプーンを置くと、九条さんは
吹き出した。
「冗談、冗談!しっかり食え」
ー この人どこまで本気か分かんないんだよな
「九条さんって…恋人いないんですか?」
「いっぱいいるよ」
「そうじゃなくて…特別な人っていうか
1番?大切な人?みたいな」
「皆それぞれ大切だけど」
「………それって皆、納得してるの?
自分以外の人の事…」
「俺は隠してないけど、納得してるのかは
知らない。でも、嫌なら会わないんじゃない?
俺は去るものは追わずだよ」
「…それってさ、九条さんも平気ってこと?
例えば相手に九条さん以外の人がいても」
「…まぁ、そうだね」
「全然理解できない…」
「そう?でも俺たちこれからエッチなこと
するんじゃないの?」
コーヒーを飲む手が止まった。
「この前もしたよな?俺が他の誰かと
寝てきたの、気づいてたのに」
射ぬくように見つめられて、体が熱くなる。
「……あれは…ヒートで…」
口のなかで言い訳をしたけど、続きは
出てこなかった。
「ぷっ 真っ赤になっちゃって
和真は単純でかわいいな」
俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でて笑う。
「大丈夫、誰も和真を責めないよ
お前と俺が良ければそれでじゅうぶんだろ?
だからお前もやりたくなったら、そう言えよ
いつでも付き合ってやるよ?」
ー なんかこの人といると
常識とか貞操観念とか…大事なモノを
忘れてしまいそうだ…
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