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九条さんはペットボトルの水をガブガブ飲んで
すぐに布団に潜った。
「寒い」
「そりゃ外にいたら冷えるでしょ」
無理もない。もうすぐ10月だ。
「おいで、和真」
九条さんが両手を広げて俺を呼ぶ。
黙ってそれに従って腕の中にくるまれた。
「あったか~」
「俺はカイロか」
「ばれた?」
「九条さん自分の家でも外でタバコ吸うの?」
「まぁね。あれ? また “九条さん” に戻ったの?
さっきあんなに蓮!蓮!って言ってたのにな」
俺は九条さんの胸に頬を寄せたまま
押し黙った。
何でこの人は、人が言われたくない事をズバズバ
言ってくるんだろう…。
「名前はエッチの時だけ?
それはそれでなんかエロいな」
「うるさいなぁ!もう! 蓮!蓮!」
「お、だんだん本性出てきたな」
「ホント、綺麗な顔して嫌な性格してるよね!」
「誉めんのか、けなすのかどっちかにして」
九条さんは俺の背中を優しく抱いて
後頭部を撫でる。
まるでペットになったみたいだった。
いいように振り回されてイラつきながらも
ゴツゴツした大きな手のひらで撫でられると
胸の奥から暖かいものが沸き上がって
俺は、またトロトロと瞼が重くなってきた。
「俺たち体の相性いいな…またしような和真」
九条さんの声が遠くに聞こえる。
夢うつつの俺は、素直にコクリと頷いてしまった。
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