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9. 想い

正月休みでだらけた体が、やっと仕事モードに 戻ってきた頃だった。 政実が、焼き鳥の旨い店があると言うので その店に集合する約束をした。 前日に政実から送られて来た地図を見て 何となくそちらへ向かったものの 駅から数分の所にあるはずの店にたどり着けず ちょっとした迷子になった。 とはいえ、駅からは近い。駅に戻って 待ち会わせを駅に変えてもらおうと、 携帯を出しながら、歩いた。 金曜の夜という事もあり、人も多く 飲み屋の呼び込みもひっきりなしで煩い。 携帯で話すふりをして歩こうと思った矢先、 「ねぇねぇ、1人?」 と、2人組のリーマン風の男たちに声をかけられた。 明らかに酒が回って陽気になっている。 「あ、友達と待ち合わせです」 そう返して、足を止めずに歩き続けた。 「えー!じゃあ一緒に飲も飲も!」 引き下がらずついてくる二人を無視して歩いた。 携帯で政実の番号を探す。 「君ってΩ?お友達は?」 若い酔っぱらい二人はずいぶん近い距離で 俺を挟むようにして歩き めんどくさいな…と思い始めた時だった。 「和真?」 声をかけられて振り返ると 蓮が立っていた。 「あ、蓮!」 ー ラッキー!スゴい偶然! これでコイツら追い払える! そう思って蓮の方に駆け寄ると 蓮は1人ではなかった。 首輪つきの…年はきっと俺と変わらないくらい 色白で、ハーフのような見た目の綺麗なΩの 男の子と一緒だった。 ー まずい、デート中だったか そう思った時には遅かった。 「ナンパ?」 蓮は隣で不機嫌そうなΩを気にもせず 俺に話しかけてきた。 「…あ、うんそんな感じ?」 俺はチラッとナンパしてきた奴らを見ると 先ほどのチャラさを引っ込めて、こっちを 睨んでいた。 「お兄さんたちごめんね、コイツ弟なんだ」 蓮がそいつらにヘラっと笑って見せると 2人はチッと舌打ちして、さっさと立ち去った。 「ごめん、助かった」 俺は謝りながら、隣のΩにも頭を下げた。 不機嫌さを隠そうとしないそのΩは、ふんっと 俺から目を反らした。 「こんなとこで1人で 何うろうろしてんだ」 さっきのナンパに向けた作り笑顔から一変 蓮が珍しく苛立った様子で声を荒げるので 少し動揺した。

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