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9. 2
「友達と待ち合わせ…店が見つからなくて…」
俺が口ごもるように言うと、蓮がため息をついた。
「店ってどこ?」
「ここ…」
俺は政実から送られて来た地図を見せた。
「ああ、ここか…おまえ行きすぎてるし
一本入る道間違えてるよ」
「あ、やっぱり?」
「送ってやるよこっからすぐだし」
「え、いい!いい!平気」
俺はΩの子をチラッと見て、蓮に
怒ってるよ、と目で伝えた。
蓮は一緒にいるΩの手を握って軽く揺する。
「すぐ近くだしいいよな?」
「……ご勝手に」
「ほら、いいって」
ー いやいや、全然良さそうじゃないし
この空気…ナンパされてた時より
気まずい。
「いいよ、友達に電話して、駅に待ち合わせに
してもらうから!助けてくれてありが……」
「あ!!ネギ!!」
後ろから元気な声で呼ばれて振り向くと
政実が俺を指差していた。
「え、政実なんでこんなとこに?」
「俺、道間違えちゃってさ
この前来たときは友達に連れて来てもらったから
道分かってるつもりが、分かってなかった」
政実は、ハハハ、と声を上げて笑った。
「まぁ、会えて良かったよ」
俺はあきれつつも、これで蓮に送ってもらう
必要がなくなって安堵した。
「知り合い?」
政実が俺の耳にひそひそと尋ねてくるから
職場の先輩、と紹介した。
二人は、どうも、と軽く会釈しあった。
「じゃ、行くね。お騒がせしました~」
俺は政実の腕をつかんで歩きだす。
「飲み過ぎんなよ」
俺は振り返って、ハイハイと返事をして
急ぎ足でその場を去った。
「なんか兄貴みたいな人だね」
歩きながら政実が言った。
「さっきナンパされたの助けてもらったんだよ
だから心配してくれたんだ、たぶん」
ー まぁ、過保護はいつもなんだけど
「え!?ナンパ?ネギ、ナンパされたの?」
「ぉぉ… まぁ」
「ゴメン、ゴメン俺が待ち合わせ場所
考えなかったから」
「おまえ、顔笑ってるじゃん」
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