51 / 122

9. 5

「あれは、ただの友達。そもそも俺は自分を βだって言ってるんだから、そんな関係に なるわけないでしょ」 俺は笑いながら蓮の腕から逃れ、リビングへ 向かった。 …まだ玄関で…俺たちは何をしているんだ。 「βでも、同性が相手のやついるだろ」 「……政実は…アイツは違うよ」 俺は上着を脱ぎながら、目を落として呟いた。 「……そ」 蓮はそれっきり黙った。 俺の顔を何か言いたげに覗きこんでいる。 何?と口を開く前に、キスで口を塞がれたので 黙ってそれを受け入れた。 蓮の手が俺のベルトをはずそうとカチャカチャ 音をたてる。 「…シャワーは?」 「やっぱりこのまましたい」 「…じ…じゃぁベッドに行こうよ」 「ついに自分からベッドに誘うようになったか」 「ばか、違うでしょ ここでやられたら腰痛いんだよ」 俺の言葉にクスクス笑う。 「ハイハイ、お姫様」 「誰が姫だ!」 赤くなって怒る俺を蓮がヒョイッと担いで 寝室のベッドに転がした。 明るいリビングから薄暗い寝室に入ると 安心する。闇に包まれるみたいで。 ふたりのリップ音だけが部屋に響いて 下半身に熱がこもっていく 始まる感じが好きだ。 胸の先を噛まれて、声を漏らして 後ろにゆっくり指を伸ばされた時に 蓮が言った。 「ここ、キモチいの? ネギ 」 頭の裏にヒヤリと冷たい物が走って 一気に熱が覚めるのを感じた。 「 …やめてよ」 俺が低い声で言って、蓮の手が止まる。 「どいて、帰る」 押し退けようとする俺の肩を 蓮がさらに強い力でベッドに押さえつけてきて 俺の体がベッドに軽くバウンドした。 「何でそんなに怒ってるの?」 何の感情も読み取れない目で見下ろされる。 「…別に、その呼び方で呼ばれたくないだけ」 「何で呼ばれたくないの?」 「…………」 何でって…?知らない。 あいつを…政実を思い出すから? 政実と呼びたくなるから? そんな事して、あいつを汚してる気がするから? 「アイツが好きなの?」

ともだちにシェアしよう!