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「…な…に…言って、?」
「だってそんなにムキになっちゃって
おかしいだろ」
「………」
「あ、やっぱりな…お前分かりやすいんだよ」
「ち、違う!」
「別にそんなの俺は気にしないけど」
「………?」
「お前が俺を、誰の代わりにしてても
気にしないよ」
「……そんなαいる?」
「ハハハ、ここにいたな」
蓮は俺の上から下りて、隣にごろんと
横になった。
「でも知りたいとは思うよ
和真が誰を思ってイラついて、苦しんでるのか」
「…別に苦しんでなんていない」
「先の見えない恋は苦しいんじゃないの?」
蓮が冗談を言うように笑った。
「先の事なんてとっくに諦めてるし
今さら…何も望んでない」
「まだ10代のくせに、諦めが早いな」
「片想してる期間は、すでに結構長いからね」
「……ップ…結局好きって認めてるじゃん」
蓮は面白そうにお腹を抱えて笑った。
「からかうならもう話さない」
俺が ごろんと背を向けると、蓮がゴメンゴメンと
あわてて後ろから腰に抱きついてきた。
「もう、好きって…愛って、どういう事なのかも
分からないよ…
ただ政実はずっと俺の中で特別なんだ。
俺の優先順位の1番に、ずっとあいつがいる
それだけの事だよ」
「告白してみようと思った事はないの?」
「ないことも無いけど、今はもう無い
長く一緒にいすぎた…。政実は男は対象外。
知りすぎるくらい知ってるから」
「もったいないな、こんなエロい体が
隣にあって何にもしないなんて」
俺の股をまさぐりながら蓮が言うので
思わず振り返って、蓮の頭を殴った。
「イタタ、すみません!」
「今度変なこと言ったらコロス!」
「こわ!」
「とにかく、政実のことはもういいよ
今の関係性でそれなりに満足してるんだ…
だから、もうほっといてよ」
「……そうかな…今年で27になる俺からすると
10代の恋愛なんてもっとめちゃくちゃでいいと
思っちゃうけど…当たって砕ければいいのに」
「砕けたくない。
政実に距離置かれたりしたら、堪えられない
それなら今のままでいい」
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