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10. 甘くて苦い ※

「誕生日はさぁ、焼き肉がいいな」 「……誰の誕生日?」 「え、蓮のでしょ?」 仕事帰り、二人でクレセントで夕食を食べながら 近づいてきた蓮の誕生日の話をする。 「俺の誕生日なのに和真の食べたいもの行くの?」 蓮があきれたように笑った。 「じゃぁ蓮何がいいの?」 「…焼き肉でいい」 「ほらね~! 俺たまにはおごるから!」 「いいって、子供はそんなの気にしなくて」 「子供って…」 ー 子供相手にガンガン腰振ってるくせに… 「あ、でも俺当日は実家帰るから無理だぞ」 「当日を独占しようなんて更々思ってないよ」 俺が笑うと、蓮も少し気まずそうに笑った。 実家帰るなんて、本当か嘘か知らないけど 何人に同じ言い訳をしたんだろうね。 「じゃぁ欲しい物は?何かないの?」 俺が聞くと蓮はしばらく口に手を当てて考えて じゃあさ、と声を潜めて、顔を近づけて囁いた。 「発情期に仕事休んでよ」 「は?」 「そろそろ、だったよな?」 「まぁ…そうだね」 「朝から抑制剤 飲まずにさ、 ヤりまくろうぜ」 「……あんた何て事言ってんの」 俺は考えただけで顔が熱くなった。 「…あ、赤くなってない? かわいい~ よせよ、今から燃えるだろっ」 「 っば、ば、ばかっ!」 「やったことないだろ? 薬なしで」 「………そりゃ 無いけど」 「じゃ、今のうちに経験しとけ 自分がどうなっちゃうか」 蓮は心底可笑しそうに笑ってる。 ー どうなっちゃうって…どうなっちゃうの? 期待なのか不安なのか…吐き気すらする。 初めて蓮とラブホへ行った時、薬が効いてなかった から、あんな感じだろうけど…。 「蓮は…やったことあるの?」 「……あるよ何人か」 “何度か”じゃなくて、“何人か”というのが 蓮らしいな、と思った。 「どう?やってみる?」 「…いいけど…どうなっても 責任とってよ?」 「もちろん」

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