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11. 3
駅ナカのカフェに入って、入り口近くのソファー席に
向き合って座った。
「声つらそう…風邪?」
「…たぶん…」
「ごめんね風邪気味なのに誘っちゃって…」
「平気」
俺は笑ってコーヒーに口をつけた。
蓮がポケットに入れて持っていった缶コーヒーを
思い出した。
「僕、内海 碧斗 」
「あ、根岸 和真です」
「何歳?僕は22」
ー え!年上!?
「18…です」
「えー!未成年?
蓮、未成年にまで手出してたの!?」
碧斗が大声を出すので、店内にいた客数人が
チラチラとこちらを見た。
碧斗は肩をすくめて口をふさいだ。
「…いつ頃から付き合ってるの?」
ー 質問攻めだな…
「去年の秋頃かな」
「…ふぅん…同じ職場なんだよね?」
「はい」
しばらく気まずい沈黙が流れた。
俺も何か聞いた方がいいんだろうか?
でも、何も浮かばない…。どうしよう。
「…蓮ってさ、他にも親しい関係の人いるんだよ
知ってる?」
碧斗は俺の目をじっと見ながら
確認するように聞いた。
「…知ってる」
「知ってるけど平気なんだ?」
「……まぁ、気にしない…かな?」
「…そう、ならいいんだ」
碧斗は肩の力を少し抜いて、やわらかく微笑んだ。
幼く見える顔が更に幼く見える笑顔だった。
「蓮は悪い奴じゃないんだけど、来るもの
拒まずというか…身近にΩがいると、つい
世話をやきたくなっちゃうんだよね…
だから君が、自分の事を蓮の特別な存在だって
勘違いしてたらかわいそうだなって思ったんだ」
俺は何て答えたらいいか分からず、黙って
コーヒーを飲み続けた。
「君は今まで蓮が付き合ってきた人の中でも
ずいぶん若く見えたから…」
「他の人とも会ったことあるんだ」
「まぁ偶然ね、蓮は家に連れ込むの嫌うから
外で飲み歩いてると、会っちゃうんだよね
蓮が利用する店は僕もよく行くし…」
ー え?
「……そう、知らなかった? 蓮、セフレは
家に連れ込まないって決めてるんだよ。
プライベートに踏み込ませたくないんだ」
碧斗が腰を上げて、急に顔を近づけてきて
一瞬キスでもされるのかとドキッとした。
でも近い距離で、彼は息を深く吸い込んだ
だけだった。
「ぁあ、やっぱり君だね…」
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