63 / 122

11. 3

駅ナカのカフェに入って、入り口近くのソファー席に 向き合って座った。 「声つらそう…風邪?」 「…たぶん…」 「ごめんね風邪気味なのに誘っちゃって…」 「平気」 俺は笑ってコーヒーに口をつけた。 蓮がポケットに入れて持っていった缶コーヒーを 思い出した。 「僕、内海 碧斗(あおと)」 「あ、根岸 和真です」 「何歳?僕は22」 ー え!年上!? 「18…です」 「えー!未成年? 蓮、未成年にまで手出してたの!?」 碧斗が大声を出すので、店内にいた客数人が チラチラとこちらを見た。 碧斗は肩をすくめて口をふさいだ。 「…いつ頃から付き合ってるの?」 ー 質問攻めだな… 「去年の秋頃かな」 「…ふぅん…同じ職場なんだよね?」 「はい」 しばらく気まずい沈黙が流れた。 俺も何か聞いた方がいいんだろうか? でも、何も浮かばない…。どうしよう。 「…蓮ってさ、他にも親しい関係の人いるんだよ 知ってる?」 碧斗は俺の目をじっと見ながら 確認するように聞いた。 「…知ってる」 「知ってるけど平気なんだ?」 「……まぁ、気にしない…かな?」 「…そう、ならいいんだ」 碧斗は肩の力を少し抜いて、やわらかく微笑んだ。 幼く見える顔が更に幼く見える笑顔だった。 「蓮は悪い奴じゃないんだけど、来るもの 拒まずというか…身近にΩがいると、つい 世話をやきたくなっちゃうんだよね… だから君が、自分の事を蓮の特別な存在だって 勘違いしてたらかわいそうだなって思ったんだ」 俺は何て答えたらいいか分からず、黙って コーヒーを飲み続けた。 「君は今まで蓮が付き合ってきた人の中でも ずいぶん若く見えたから…」 「他の人とも会ったことあるんだ」 「まぁ偶然ね、蓮は家に連れ込むの嫌うから 外で飲み歩いてると、会っちゃうんだよね 蓮が利用する店は僕もよく行くし…」 ー え? 「……そう、知らなかった? 蓮、セフレは 家に連れ込まないって決めてるんだよ。 プライベートに踏み込ませたくないんだ」 碧斗が腰を上げて、急に顔を近づけてきて 一瞬キスでもされるのかとドキッとした。 でも近い距離で、彼は息を深く吸い込んだ だけだった。 「ぁあ、やっぱり君だね…」

ともだちにシェアしよう!