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「ごめんごめん待った?」
すぐに田口さんが小走りで現れた。
「いえ、今来たとこです」
「これなんだけどさ…」
セダンタイプの車の助手席から、マチのひろめの
紙袋を出す。
確かに学校の初日に渡される、全教科の教科書
くらいの量にはなってるけど、やっぱり車で
運んでもらうほどの量ではなかった。
「ありがとうございます」
「なんか分かんないことあったら教えるよ」
「どうも…」
「…実は、今の契約内容の件でも、ちょっと話しを
聞きたい事があってさ…おごるから軽くご飯でも
行かない?」
「……えっと…ここじゃダメなんですか?」
「俺はいいけど、あんまり人に聞かれない方が
いいでしょ?」
含んだ言い方を聞いて
ああ、Ωを伏せて契約している
件で話したいのか、と思った。
でも、そんな話し…わざわざ外でしなくても…
社内では人に聞かれる可能性があるからだろうか?
正直、嫌な予感しかしないけど…変に断って
機嫌を損ねて、悪い意味で目をつけられるのも
避けたい…。
「ただご飯行くだけだよ、さすが…
警戒心が強いね」
田口さんがクスクス笑った。
「いえ、そういう訳じゃ…」
不意に…ライトの点滅とともに、ピピッと
ロックの開く音が聞こえた。
2台隣に置かれたランクル。
内心、アソコが縮み上がるほど驚いた。
「お疲れさまです」
蓮が後ろから現れて、軽く会釈して自分の車の
後部座席を開け、手に持っていた荷物を放り込む。
「お疲れさま」
田口さんも笑顔で返事を返して、俺もつられて
頭を下げた。
「じゃ、どうする?」
「…えっと」
ー どうしよう…この状況はマズイ。
よく分からないけどマズイ!
でも、何でまずいんだ?
なんで俺は今さら蓮のことを気にして
こんなに動揺してるんだ…?
ちらっと蓮の方を見たら、やっぱり睨むように
こっちを見ている。
ー ああ、もう早く この場を逃げ出したい。
「じゃぁ…」
ごちそうになります…、と
言いかけた時に、遮るように蓮が声を上げた。
「田口さんダメです」
「は?」
田口さんが真顔で蓮を見る。
「ソイツは
俺のだからダメです」
冗談みたいにニッコリ笑って蓮が言った。
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