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「君たちは何でも無かったんじゃないの?」
田口さんが、同意を求めるように俺を見て
俺も反射的にウンウンうなずいた。
「騒がれたくないから、隠してるだけですよ
当たり前でしょ」
蓮がヘラヘラ笑った。
「和真、乗れ」
急に強い口調で言われて、心臓が跳ね上がる。
「根岸君びっくりしてるじゃん
別にご飯食べるだけだし、本人の自由だろ?」
「ダメです。俺αなんで束縛しないと
気が済まないんですよ。すみません」
そう笑って、もう一度、和真、と呼ばれる。
俺はどちらにも動けず、眉を寄せて蓮を睨んだ。
蓮は表情を変えずに俺を見つめ返す。
「九条、案外 子供なんだな。
いいよ、根岸君。また今度ね」
そう言われて、少しホッとして、田口さんに
すみません、と頭を下げる。
とりあえず蓮の車の助手席に乗り込むと
蓮もすぐに運転席に座り 、窓を開けて田口さんに
頭を下げて駐車場を出た。
駐車場を出てしばらく走り、赤信号で車が
止まった瞬間
「どういうつもり?」
「どういうつもりだ!?」
ほとんど2人同時に叫んだ。
「は?」
「おまえ、あの車乗って本当に飯だけで
終ると思ってんの?」
「当たり前でしょ」
「バーカ」
「!なっ…! 蓮とは違うんだから、そんな皆が皆
送り狼になるわけない!」
「顔見れば分かるよ、よだれ垂らして
獲物がかかって大喜びって顔だ!」
「…蓮、おかしいんじゃない?」
俺が呆れて言うと、蓮がため息をついて
俺を見た。
「長年の恋が実ったなら、もう少し警戒心持て。
つまんないことで、ダメにしたくないだろ」
その言葉をきいて窓の外に目線を反らした。
なんだか泣きたくなってきた。
「誰にでも尻尾ふってついてく
尻軽になんてなるな」
「…っなんで…蓮にそんな事…
言われなきゃなんないの?
自分は誰とでも寝るくせにっ」
一番言いたくない事を言ってしまった。
でも、言い出したら止まらなかった
「本当にご飯だけだったかもしれないし
俺、契約の事話したいって言われて…
断りづらかっただけだし…
例えそこで何かあったとしても…別に
大した事じゃないっ」
「…は?何かって何?」
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