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俺は本当に怒っている。 だから笑いたくなんてない。 なのに、止めようと思えば思うほど 笑いがこみ上げて、涙が出た。 「おまえが焦らせるから…」 蓮もつられて苦笑いした。 蓮の気まずそうな顔が可笑しくて。 涙も笑いも止まらなくて、我慢できず、俺は 蓮の胸にそっと顔を押し付けた。 蓮は少し戸惑いながら、俺の肩に手をおいて そっと撫でて、呟いた。 「ごめん…」 謝られたら笑いは消えて、涙だけ残ってしまう。 俺は蓮のTシャツの脇腹をぎゅっと握って そのまま、しばらく泣いてしまった。 涙が止まる頃、俺のバックの中で 携帯が鳴って、蓮は俺を体から離すと 「田口さんかも…」 と言って、出るように促す。 俺はしぶしぶバックから携帯を出して見て 首を振って、政実だよ、と伝えた。 「出ろ」 「…いいよ、別に」 「浮気してる訳じゃないんだから 堂々と出ろ」 蓮は俺から携帯を取り上げて、勝手に受話の ボタンをタップすると、俺の耳に携帯を当てて 無理やり渡してきた。 (もしもし? ネギ? ) 「…う、うん、どうした?」 (なんか急に村山が来ることになってさ 大将のとこで飲むから、もしこっちに 向かってるなら家じゃなくて、大将っとこ おいでよ) 「…あーごめん…今日は行かない… 村山によろしく」 (そっか、了解… なんか元気ない?) 「平気、ちょっと風邪気味かな…」 (大丈夫? 何か買って持ってこうか?) 「いや、いい、いい!」 (…そう?じゃぁまた…お大事に) 静かに電話をきってバックにしまう。 「帰るよ…」 俺がポツリと言うと、蓮が、送る、と言って 玄関を開けた。 車に乗り込んで、エンジンをかける前に 蓮が思い詰めた顔で切り出した。 「田口さんさ、お前が入ってくる前に 契約社員のΩとトラブったんだよ」 「え?」 「…妊娠させてさ、田口さんは合意の上だったって 言ったけど、相手はレイプされたって騒いで… 何か飲まされて、意識がないところを 襲われたって」 「………結局どっちだったの?」 「分からない、大金払って黙らせたとか… Ωの子の狂言だったとか、噂は色々あったけど それからすぐΩの子も辞めちゃったから」 俺は唇を撫でて、黙りこんだ。 「…だから、田口さんには気を付けろよ 今回俺が派手に威嚇したから、さすがに もう、手は出してこないとは思うけど…」

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