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「俺が言いたいのはそういう事じゃなくて…」
「あ、あっさり否定するんだ」
「俺が気になったのは…碧斗君だよ」
「………」
「俺、蓮といる事で誰かを苦しめてるなんて
思ってなかったから
それに気づいたら、こんな関係やっぱり
ダメだって思って…」
「…碧斗が言ったの?俺と会うなって」
「違う違う!」
俺はブンブン首を振った。
「俺が勝手に思ったの」
蓮はじっとハンドルを見つめて
考え込むような顔を浮かべている。
「蓮だって気づいてるんでしょ?
碧斗君は蓮の事が好きなんだよ」
「知ってる」
小さいけどハッキリした声で答えた。
「でも俺にはどうすることもできないよ
突き放す事も、受け入れることも無理なんだ
碧斗は倫斗の弟で、それ以上にも以下にも
ならない」
「…碧斗君、蓮の事なんて好きじゃないって
言ってた。でも、それ認めたら終わっちゃう
気がして言えないだけなんだ。
政実の事が好きな俺にちょっと似てる」
俺は苦笑いしながら話した。
「弟だ、友人だって、まとわりついてるのは
楽だし、終わりがないもん
恋愛になったらさ、相手が同じように好きに
なってくれなきゃダメだし、相手に特別な
存在ができたら、側にいられないもんね…」
「そんな気持ちなのかな?
今までも碧斗は俺の付き合いに
口だしてきた事なかった
ただ、俺のする事、呆れて見てるだけで
そのうち俺を軽蔑して離れてくだろうって
思ってたけど…忘れた頃に必ず連絡がきて…
結局…ずっと、つかず離れず、一緒にいる…」
「俺も蓮の事好きだよ
でも碧斗君の思いを知ってまで
すがり付きたい好きじゃない…」
「……そうか」
「だから、俺は下りるよ…
最初にちゃんと話さなくて、騙したみたいに
なっちゃってごめん…」
「……うん、分かった」
蓮は俺を見て口の端だけで笑った。
そして車を発進させた。
バックミラーの裏に俺が渡したお守りが揺れてた。
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