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「バカじゃないの、フェロモンに負けて あっさり襲っちゃうなんて…最低だなっ」 俺は顔も見ずに、吐き捨てるように言った。 「……は? おまえ、ヒートのΩと 2人きりで部屋にこもったことないだろ」 「こもらなくてもどうとでもなるよ 一緒にタクシー乗って家の前で下ろしてやれば 終わったのに…。お前ら二人ともヤル気で家に 来たんだろ?」 「…とっさに、他の方法が浮かばなかった だけだよ… ってゆうか、俺、何で怒られてんの?」 そのとおりだ…。たとえヤル気で来たとして それを俺に咎められる理由なんて政実にはない。 でも、我慢できなかった。 「男に興味ないんじゃなかったのかよ おまえダサいな」 訳の分からない嫌みを言って歩き出した。 「ちょっと待てよ!」 政実が俺の肩を掴んで止める。 「触るなよっ!気持ち悪い!」 力一杯その手を振り払うと 政実が驚いて目を見開いた。 それから静に眉を寄せて俺を睨み付ける。 「……心配しなくても、お前なんかに死んでも 手出さないから安心しろよ」 俺は政実を睨むことで、泣きそうになる自分を ごまかした。 「…突然来て邪魔して悪かったな もう、勝手に来ないよ」 言いながら、手に持っていた鍵を政実に 投げつけて俺は駆け出した。 最低だ。ダサいのは俺だ。 これで、全て終わりだ。 そう思った。

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