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14. 4
歓楽街に戻ってきた。
駅前からタクシーに乗って、フラフラと。
どこかでもう一度飲みたい
…いや、そうじゃない。
飲むだけなら家で一人でビールでよかった。
そうしなかったのは
一人になりたくなかったからだ。
誰でもいい。
どうでもいい。
誰か俺を抱いたらいいのに。
そんな風に考えながら街をさ迷ってた。
居酒屋にしても、バーにしても
お酒を楽しむ店に一人で入った事なんてない。
店も全然知らないし、時間が深いから、店じまいを
始めている店も少なくなかった。
一件の立呑屋が、まだ賑わっていて
間口も広くて入り安そうだっから
そこに入ろうと決めた。
すると、たまたま出てきたサラリーマン風の
男に声をかけられた。
「あれ1人?」
「…ハイ」
「俺もなんだ。寂しくてさ一緒に飲まない?」
ほろ酔い状態のその男は、見た目は普通のβだった。
良いところも悪いところもみつからない。
そこが気に入ったので、ついて行ってみることにした。
俺が黙って頷くと、本当に~?と喜んだ。
「良い店知ってるんだよ」
そう言われて、ついていく。
こんな露骨なナンパについてくなんて
初めてだったけど、自分でも驚くほど冷静だ。
「君ってΩ?」
「ハイ」
「そうかーやっぱり。俺はβ」
「………」
あれこれどうでもいい話をされて、適当に
相づちを返す。
気づいたら人通りのまばらなホテル街に来ていた。
「……本当にこっちに店あるの?」
俺が聞くと男は、さぁ~とにやついて返してくる。
その笑い方がイラついて一気に覚めた。
ホテルが嫌だった訳じゃない。
本当に生理的にその笑い方が気に入らなかっただけ。
「…俺、やっぱり帰る」
そう言って、来た道を戻ろうとしたら、腕を
掴まれた。
「ここまで来たら付き合ってよ~」
ヘラヘラ笑って目の前のホテルに入ろうとする。
「離して下さい」
「まあまあ」
「……あ、俺未成年です」
「そうなんだ~ラッキー」
ダメだ。ゲスだ。話が通じない。
俺が腕を振りほどこうと暴れていたら
突然、声をかけられた。
「何してるの?」
知ってる声だった。
振り返ると、見知らぬ女性と腕を組んだ
蓮が立っていた。
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