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蓮から離れていれば、まだそれほどでもない。 ぬるめのシャワーをゆっくり浴びた。 出るのが怖い。 なんだか自分が自分でなくなりそうな予感がする。 リビングに戻ると蓮がキッチンで何か作っていた。 俺はその様子を見て少しホッとした。 「なんかいい匂い…」 「フレンチトーストだけど…食えそう?」 「うん、お腹すいた」 「和真、ベーコン焼いて」 「はいはい」 あっという間に出来上がったブランチを 二人でリビングで並んで食べる。 時間は11時を過ぎていた。 食べ始めてすぐ携帯が鳴った。 蓮がチラッと俺をみる。 「メールだから…」 そう言って無視するように促した。 蓮は昨日の事を何も聞いてこなかった。 でも、こうして蓮に頼っておいて、何も話さないのは 少し申し訳ない気がする。 「昨日何があったか…聞かないの?」 「…聞いてほしければ聞くよ」 蓮はテレビを見ながら、モグモグ食べ続けて 興味無さそうな顔で言った。 「…今はいいや…今度話すね…」 俺は笑ってプチトマトを口に放り込んだ。 蓮がくれた楽しい時間を壊したくない。 今は…思い出したくない。 蓮は、あっそ、と言いながら自分の皿のプチトマトを 俺の口に持ってきた。 ふざけて俺が口を開けずに抵抗すると ムニ、ムニとトマトを強く押し付けてくる。 俺は笑って、仕方ないな、という風に パクッと食べた。 蓮は満足そうに笑って。俺の頬に大げさに キスをした。 ふざけてじゃれ合うようなキスでも 今はいちいち下半身に響く。 すぐに呼吸が上がって、もっと触れてほしくなる。 でも俺が ねだる素振りを見せると蓮は すぐにスッと体を離す。 「葡萄食わせたいな」 突然そう言うと、いそいそと立ってキッチンへ 向かう。 ー 蓮の食べさせたい病が始まった…。 本当はさっさとベッドに行ってヤりたい。 スッキリしたい…。言う勇気はないけど…。 まだ昼過ぎだというのにカーテンを閉めて部屋を 暗くして、ずいぶん昔のホラー映画を見始める。 有名なアメリカ映画だったけど、古すぎて 俺は1度も見たことがない。 それなりに興味をもって見始めたのに 蓮は全然映画を見させてくれなかった。

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