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16. 5

後日、俺は政実と何があったのかを蓮に話した。 ラブホのベッドの上で、激しく肌を重ねた後 眠りに落ちる前に。 話を聞いて蓮はまた、バカだなと笑った。 「俺だったらフェロモンで引っ掛かるなんて ラッキー!Ωでよかった~ くらいに思って、速攻落としに行くけどな」 「そんなに単純じゃない、そもそもヤルのが 目的じゃないんだし 俺の事、恋愛対象として見れない政実と 体だけ繋げても辛さが増すだけだよ」 「やったことで意識しだすかもよ」 「罪悪感で遠ざけるかも」 「マイナス思考だなぁ~」 俺も一緒に笑った。その通りだよって。 「俺、政実がこのままずっと女の子とだけ 付き合って、結婚して…それだったら全然 平気だったと思うんだ 心のどこかで、それなら仕方ない 戦う次元が違うんだって自分に言い訳してさ…」 蓮は俺の肩を抱いたまま、じっと 真剣に聞いてくれた。 「それが突然現れた、知り合って間もない子に ひっくり返されてパニクっちゃって そしたらあんなとんでもないこと 口走っちゃった」 蓮は笑った。 「若さだね」 「そうなのかな…」 「もう忘れろよ。若気の至りって事で 笑い事にしてさ」 「……早く笑えるようになりたい」 その後政実から、あのΩの話が出てくる事はなく 関係をもったのもあの1度きりだったようだ。 あれは本当にヒートが起こした 事故みたいなものだったのかもしれない。 俺は以前ほどではないけれど 政実の家にも行くようになったし 関係も表面的には元に戻った。 でも、俺の心の中はハッキリと変わった。 政実との関係を変えよう、いつか変えたい という気持ちはゼロになった。 だからといって政実を思う気持ちが 消えてなくなってくれる訳じゃなかったけど。

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