100 / 122
16. 5
後日、俺は政実と何があったのかを蓮に話した。
ラブホのベッドの上で、激しく肌を重ねた後
眠りに落ちる前に。
話を聞いて蓮はまた、バカだなと笑った。
「俺だったらフェロモンで引っ掛かるなんて
ラッキー!Ωでよかった~
くらいに思って、速攻落としに行くけどな」
「そんなに単純じゃない、そもそもヤルのが
目的じゃないんだし
俺の事、恋愛対象として見れない政実と
体だけ繋げても辛さが増すだけだよ」
「やったことで意識しだすかもよ」
「罪悪感で遠ざけるかも」
「マイナス思考だなぁ~」
俺も一緒に笑った。その通りだよって。
「俺、政実がこのままずっと女の子とだけ
付き合って、結婚して…それだったら全然
平気だったと思うんだ
心のどこかで、それなら仕方ない
戦う次元が違うんだって自分に言い訳してさ…」
蓮は俺の肩を抱いたまま、じっと
真剣に聞いてくれた。
「それが突然現れた、知り合って間もない子に
ひっくり返されてパニクっちゃって
そしたらあんなとんでもないこと
口走っちゃった」
蓮は笑った。
「若さだね」
「そうなのかな…」
「もう忘れろよ。若気の至りって事で
笑い事にしてさ」
「……早く笑えるようになりたい」
その後政実から、あのΩの話が出てくる事はなく
関係をもったのもあの1度きりだったようだ。
あれは本当にヒートが起こした
事故みたいなものだったのかもしれない。
俺は以前ほどではないけれど
政実の家にも行くようになったし
関係も表面的には元に戻った。
でも、俺の心の中はハッキリと変わった。
政実との関係を変えよう、いつか変えたい
という気持ちはゼロになった。
だからといって政実を思う気持ちが
消えてなくなってくれる訳じゃなかったけど。
ともだちにシェアしよう!