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「そ、そうなの…?」 ー 何も期待されてなかった……。 ちょっとショック…かも。 「言葉なんかより、可愛い抱き枕の方が 数倍癒してくれたよ。サンキュ」 ー 俺は抱き枕だったのか… 「…そっか…まぁ蓮が元気になったなら それでいいや…」 俺は少し気持ちが軽くなって笑った。 「心配してた?かわいいな和真」 「かわいいって言うな!」 ー 確かに真剣に心配してたけど… 蓮を横目で窺うと、少し笑いながら前を見て ハンドルを握っている。 柔らかな表情からは、昨夜の苦悩は感じられない。 きっと蓮は、こんな風に人知れず、一生消えない 痛みとともに生きていく。 誰がどんな言葉で慰めても、蓮の後悔はずっと 胸の奥で燻り続けるんだろう。 消すことはできないけど… 蓮が俺と居る時に笑っていられるように… 抱き枕だって、猫だってなってやれる。 蓮の心配症が倫斗君がレイプされたトラウマから くるものなら… あの時も、あの時も… 俺に何かあったらきっと、全然関係ないくせに 蓮は自分を責めたんだろう。 ー 何もなくて良かった 蓮につまらない傷を増やさなくて。 発情期に家に囲いたがったのも ナンパされるのを嫌ったりしてたのも 今思えば全部納得がいく。 俺と倫斗君が重なって見えて、怖かったんだ。 あんなバカな真似もうしない。 理由はどうあれ、俺を大切に思ってくれてる 蓮の為に。俺もちゃんと自分を大事にしよう。

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