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18. 愛しい日々 ※

運命というものは本当にあるんだろうか。 政実に出会えた事も、蓮と出会えた事も 俺にとっては運命だった。 2人をそれぞれ違う形で好きだと思ったのも。 好きだと思っていたのに、自分だけのものに できなかったのも。 全部が運命。 ・ ・ 「え? 異動?」 「うん」 「どこへ?」 「名古屋だって」 クレセントでコーヒーを飲んでいた時のこと。 蓮があんまりサラッと口にするから 一瞬聞き流しそうになった。 4月から蓮が転勤になった。 そして、俺も試験に合格して、4月から 社員として働きだす事が決まっていた。 「え、ずっと?」 「どうかな最低でも2年かな」 「……そう」 「なんだよ、淋しい?」 「…うん」 自分でも驚くほど素直にうなずいた。 蓮も、きっとからかうつもりで言ったのに 俺が露骨にシュンとしたから、驚いて一瞬 視線が泳いだ。 「いつ行くの?」 「まだ決まってないけど、遅くても3月の 中頃かな…? 引き継ぎもあるし」 「すぐだね…」 「まぁな…でも名古屋なんて近いし ヤりたくなったらいつでも来いよ」 「高いセックスだな」 2人でバカな事を言って笑った。 不思議な気分だ。 いつでも会いたいときに会えていたのに…。 「向こう行く前に何か旨いもの食いに行く?」 「肉?」 「何でもいいよ」 「………俺…蓮のナポリタンがいいな」 「そんなもんでいいの?」 「うん、行っちゃったら食えなくなるし もう一回ちゃんと教えてよ」 「大したもの入れてないし」 大袈裟だなと蓮が笑った。 時間というものは、待っているときには なかなか進まないのに、来ないでほしいと思うと あっという間に来てしまう。 蓮が居なくなる実感なんて、全然わいてこないまま その日はどんどん近づいた。

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