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引っ越しまで、俺達は今まで以上によく会った。 1ヶ月もなかったけど、家ばかりではなく 買い物に出掛けたりもして。 まるで恋人のようだった。 蓮は、巣だっていく子供を見守る親のように 顔を見ればあれこれ注意してきた。 夜遅くまで出歩くなとか、社内の誰それには 気を付けろ、頼るなら誰を頼れ、飲みすぎるな、 発情期は無理しないで、休めるときは休めとか…。 ほとんどはもう何度も聞いたことばかり。 俺は煩いと思いつつ、蓮の過保護が愛しくも思えて 笑いながら、ハイハイと聞き流して過ごした。 「段ボール増えたね~」 「もうだいたい詰めた、あとは引っ越し屋が やってくれる」 「出発は明後日?」 「おう」 二人でナポリタンを作りながら話す。 「名古屋の部屋はどんな感じ?」 「ここより広いよ。部屋数は一緒だけど 落ち着いたら来いよ」 「うん」 「はい、あーん」 いつものように蓮が、炒めたソーセージを つまんで俺に食べさせる。 こうしてキッチンでいちゃつく事も 当分なくなる…。 「あーん…」 口を開けて待ってもソーセージがやってこない。 いつものイタズラも。 俺は蓮の手を捕まえて指ごとしゃぶって ソーセージを奪ってから手を離す。 蓮を横目で見て笑うと 蓮は少し驚いた顔で俺を見てた。 「キッチンでエロい事するな」 「どっちがだよ」 「……お母さんはそんな破廉恥な子に 育てた覚えはありません!」 「よく言うよ、全部 蓮が教えたんだろ」 笑いながら皿をリビングへ運ぶ。 「何それ…なんか嬉しい」 呟きながら蓮もビールを持って追ってきた。 大きな家具やテレビ、食器などは出たままでも 細々とした物は、全部段ボールの中に収まって それだけで部屋の様子は随分変わってみえた。 物の少ない蓮の部屋が更に無機質に殺風景に なっている。 この部屋には色んな思い出が詰まってた。 リビングでも、玄関でも、バスルームでも 色んな所でやったな…。 ケンカもしたな…。 色んな事を思い出しながら食事をして ビールを飲んで、ゆったり時間が流れた。 「cラインの班長は本気でお前のこと狙ってるから 絶対二人きりになるなよ」 「それ前にも聞いたよ」 「あの人はホントにヤバイから」 「ハイハイ」 「あ、あと田口さんもな! 俺が居なくなったら、また…」 喋り続ける蓮に唇を重ねて、下唇を軽く噛む。 でも、肩に腕が回される前に離れた。

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