115 / 122

18. 8

ベランダでタバコを吸う蓮を ベッドに横になったまま眺める。 レースのカーテンの開いた、細い隙間から 見え隠れする背中。 俺と違って、しっかりした肩幅と身長。 バランスよくついた筋肉。 あんな風に生まれたかったと、憧れた綺麗な身体。 ベランダの手すりに肘をついて、 ボンヤリ遠くを眺めながらタバコを吸う背中を いつまでも見ていられるな、と思った。 蓮は俺がこんな風に、いつも見つめていたのを 知らないだろう…。 戻ってきた蓮が俺を見てキョトンとする。 「起きてたの?」 「なんか眠れなくて… …寒くなかった?」 起き上がって壁に寄りかかるように座る。 「今日はそんなに」 蓮も隣に座って、ペットボトルの水を飲んだ。 「…痛い?」 首に触れて聞かれる。 「まぁ、それなりに」 「………どのくらい跡残るかな…」 「ずっと消えなかったりして」 シャワーを浴びた時に鏡を見た。 大きな痣のように残された痕は、うっすら血が 滲んでいた。 「消えなかったら責任とってね」 冗談のつもりで言ったけど、 蓮は本当に申し訳なさそうにゴメンと謝った。 「和真首輪しないの?」 「俺、βって言ってるのに首輪してたら ばれちゃうじゃん」 「普段、1人で出掛けるときだけでもさ…」 「どこで、誰に会っちゃうかも分からないのに 無理だよ」 「……あ、そう」 「蓮ってば、心配しすぎ。蓮がいなくなっても 別に何も変わらないよ。出会う前に戻るだけ。 これでも今まで何事もなく生きてきたんだから」 「………」 蓮がうつ向いて黙りこむ。 「蓮もさ………」 「ん?」 「俺が居なくて平気?」 俺の言葉に蓮が目を丸くする。 「さみしくなったらいつでも 電話しろよ!」 蓮がブッと吹き出した。 「はは、そうだな淋しくなったら電話するよ そしたらすぐ新幹線乗ってとんでこいよ?」

ともだちにシェアしよう!