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蓮と俺は恋愛ではなく、ゲームをしていたんだ。 本気になったら負けのゲーム。 どちらも負けなかったけど どちらも勝ってない。 だって俺はずっと蓮が好きだった。 でも蓮の中の倫斗と戦うのが怖かった。 戦って傷つくのが怖かった。 だから戦う事から逃げた。 政実の事も同じだ…。 基本的に男に興味のない政実に ぶつかっていく勇気がなかった。 リストラされてショックを受けて、しんどかった時は 何度も携帯の蓮のアドレスを開いて見た。 でもその時には、もうずいぶん蓮とは連絡を とっていなかったし、自分が困ったときだけ 頼って連絡するなんて、あんまりにもズルい 気がして、ついに連絡できなかった。 変わりに政実や、元の同僚に励まされ支えられ どうにか乗り越え、 そして“彼”に出会ってしまった。 彼と暮らしはじめて、もう1年と少しが過ぎた。 今日はバレンタインディナーにいく予定だ。 バレンタイン…蓮の誕生日。 だからこんなに色々思い出すんだ。 元気にしてるかな? 俺のことなんてもう忘れたかな? もう一度だけ会いたい。 会って、俺は今元気で幸せに暮らしていると 伝えたい。 今一緒に暮らす彼は、会うなんて絶体に許さない だろうけど…。 会えなくてもずっと願ってる。 どうか幸せでいてほしい。 「買い物もしたいし、そろそろ準備して出よう」 「うん、蓮とデート久しぶりだね」 「……は?」 ー しまった!なんてベタなミスを…!! もう何年も連絡すらとってない人の 名前を口走るなんて! 両手で口をふさいで彼を見た。 眉を上げて射ぬくように俺を見返している。 もっと上手く誤魔化せば良かったのに 露骨にミスしたとバレる態度をとってしまった。 「誰?それ …」 俺は凍りついたまま、首を小さく振った。 彼はフッと笑って立ち上がると 俺の後ろにまわってぎゅっと肩を抱く。 「怒らないから 教えて?」 ー もう怒ってるくせに! 冷や汗をかきながら、震える唇をどうにか開いた。 「……む、昔の…」 俺はそれから文字通りベッドに縛られて 追及され、過去の相手だと彼が納得するまで 責められ続けた。 お互い立てなくなるまで夜通しヤり続けて…。 太陽が昇る頃、やっと仲直りした。 バレンタインのディナーは キャンセルになった。

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