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少しだけでええから、時間くれへん?

 目を覚ますと、見慣れない天井が見えて飛び起きた。 サイドテーブルの上にメモが置いてあるのを見つけたから、手に取る。 ‘‘会計はしたので、朝までゆっくりしてください。激しくしてごめんなぁ^_^  羽鳥ツク’’ 丸文字で書いてあるのを見て、ここがラブホテルだということを思い出し、身体がカァッと熱くなった。 「とりあえず、シャワーしてから考えよ……」 朝だからなのか声の出し過ぎでなのか、掠れた声でつぶやき、ベッドから腰を上げた。  「今日は学校1と4だけだな……何してつぶそうかな」 タオルで髪を乾かしながらスマホに記録してある時間割を確認すると、間に空きコマがあった。 「久しぶりにスーパーで肉買って、料理したいかも……ていうか、今日の人ってどんな感じなんだろう」 スマホの時間を見ると、6時50分と表示されていて、連絡するには早いかとちょっと躊躇う。 「まずはツクにお礼を言わないといけないし……メッセージに書けばいつ見ても大丈夫だよな」 よしっと覚悟を決めて、『\おいで屋/』のトーク画面を開いて、打ち始める。 「‘‘昨日はお世話になりました。会計していただいてすみません、お金は今度会った時にお返しするので、これを見たら教えてください’’っと……送信!」 ポコッと緑の吹き出しが表示されたのでホッと息を吐き、スマホを投げて着替えようと立った。 でも次の瞬間、聞き慣れた木琴音が鳴り響いたので、思い出す。 「メッセージ送ったら、電話来るんだった……」 苦笑いをしながらスマホの緑の丸をタップする。  「おはよ、平太」 掠れた低い声を初めて聞いたから誰だかわからなくて固まる。 「平太、なんで真っ暗なん?」 電話ちゃんと繋がってるやんなぁって言うふわふわ関西弁でサガだとやっとわかった。 まだ繋がっているか確認するためにスマホの画面を見ると、口元を布団で隠したサガが映っていた。 「あっ! おはよぉ、おいで屋のサガですぅ」 寝起きだからか、この前よりも間延びしていて、ふわふわなサガの目元が下がる。 「ごめんねサガ……起こした?」 申し訳ない気持ちから静かに声をかけると、んふふと柔らかく笑うサガ。 「大丈夫やでぇ、逆に心配で眠れへんかったくらい〜」 平太の方こそ大丈夫? と心配してくれるから、大丈夫だよと僕は返す。 声はガラガラだし、身体は少しだるいけど悪くないし。 「もうねぇ、顔がパンパンなのを見られるのが恥ずかしい……の」 目もパンパンやろぉと言ってからウワーと掠れた声で叫び、両手で覆う。 「どんなサガも僕は好きだよ」 自然と出た口説き文句に自分でびっくりする。 でも、指の間から僕を見たサガは口を綻ばせた。 「はぁ、早く会いたい……ベロンベロンに舐め回したい。玄関で押し倒しちゃうよ」 甘く低い声でどんどん言われるから、仕事だからと思いながらも、身体がズクンと疼く。 ああ、1万円では足りないな。

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