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お願い、神様

 「ツクにはもちろんだけど、サガにもお金渡すからね」 サガに迷惑かけたなと思って言ったのに、サガは恐いくらいの低い声で僕の名前を呼んだ。 「普通の客として俺らを呼ぶといくら掛かるか知ってる? 2時間で3万円やで」 僕はそれを聞いて、胸が苦しくなった。 彼らは雲の上の存在だって、思い知らされたんだ。 「俺は人気が高いからめったに予約とれへんの。そんな俺がどっぷり惚れてるってどういうことかわかるやんな……へ・い・た」 優しく囁くから、僕はうんと小さな声で言った。 僕は恵まれているんだってわかったから。 「かわいい……平太はええ子やなぁ」 サガは画面の前に手をかざして上下に動かす。 画面越しに僕を撫でてくれたんだ。  「俺はね、エッちゃんが選んだ子が平太で良かったと思ってるんよ……平太は本当に偉いなぁって」 「そんなことないよ。平凡な僕には友達も彼女もいないし」 いないというより、無意識に壁を作ってるというか……距離を置いてしまうみたいなんだ、と付け加えると、サガはまた、んふふと笑った。 「そこが好き……ちょっと淋しい時もあるけど、仕事の時はちゃんと受け止めてくれてるなぁって思ってるんやで?」 ありがとぉと言ってくれるサガに泣きそうになる僕。  「だから、今日の関くんも平太には心を開いてくれるよ……きっと」 耳元で小さく言うサガに疑問を抱きながらも聞いてみる。 「関くんは何が好きかな? 今日は料理作って待ってようかと思うんだけど」 「鶏肉、特にささみが好きで、生野菜が苦手……俺も平太の料理食べたいなぁ」 なんて甘い声で言うから今度作ってあげようかなって考えるのは単純すぎるだろうか。 「じゃあ媚薬入りのチーズダッカルビ作ってあげるから」 この前のアレを引き合いに出すと、むうっと拗ねた声を出したサガ。 「悔しいから、ふて寝する!」 「おやすみ、サガ」 「……いつでも電話してくるのは許してあげるよ」 なんて言うけど、僕は嬉しい反面、まだ抵抗がある。 「そんなこと言ったらダメ……サガ、かっこいいんだからストーカーされちゃう。休める時に休みなよ」 心配というか注意をしたのに、サガはクスッと笑う。 「だって、俺たち……友達やん」 サガは少し声を震わせてたから、僕もつられて泣きそうになる。 「俺、平太に救われたから恩返ししたいんよ……好きやで」 鼻をすすってうつむいた後、ププッと電子音が鳴って切れた。  僕はスマホを抱きしめるように胸に当て、目を閉じた後につぶやく。 「神様、今日は精一杯生きたいと思います。どうか、みんなを幸せにしてくださいませ」 初めて本当にいるかわからない神様にお願いしたんだ。

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