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ほんのちょっと、時間くれな?

 特になにがあったわけじゃないけど、今日は学校をサボることにする。 「サボるなんて、青春だぁね」 ‘‘学校サボるから朝からでも大丈夫です’’とメッセージを送ったら、いつも通り電話が来た。 でも、電話の相手は深い声のエッちゃんさんでも低い声のサガでもなく……高い声のツクだった。 「ツクはサボったことはある?」 「ないけどさぁ、講義中に絵の構想が浮かんでレジュメに描いてた覚えはあるよぉ」 ふふっとハートが付きそうなくらい可愛く笑う声に癒される。 「せきもっちょはかなり興奮して帰って来てなぁ、『料理むちゃくちゃ美味しいし、優しく抱いてくれたし……ペーターほんまにええやつやったわ』って珍しく噛まずに言ってたぁ」 「それは良かった……安心したよ」 「プックが『聞き取りしながらキヨプレイしたろ』ってバリ悪い顔してたけど」 ツク、それは言っちゃダメなやつじゃないかと思いながら、ははっと苦笑いをする。  「もしかしてだけど、あの紙袋……ツクのお手製だったりする?」 僕が慎重に尋ねると、鋭いねぇとちょっと低い声を出したツク。 「あの色合いにしたのはサガから僕とのやり取りを聞いて、2人の関係性を僕に知らせたらなにか起きるかと狙ったんじゃないの?」 「さぁねぇ……神のみぞ知るってことかなぁ」 ふふんと得意げに笑いながらも、ツクは言葉を濁す。  「もうそろそろ‘‘癒し’’がわかってきただろうからぁ、今日あたりに道具の打ち合わせしてきてぇ?」 「道具ってなんの?」 本当にわからなくて、素直に聞いてみた僕。 「もう、とぼけてるねへいちゃん……繋がるためのアレだよ」 甘く低い声で囁かれたので、ズクンと身体が震え、熱くなる。 「今日はカラカラだから、ローションとかコンドームの薄さとか相性いいのを教えてくれると思うよぉ、たぶん」 なんかぁ、どっかへいちゃんに似てるんだよねぇと適当な感じでふわっと話すツクになんでか笑えてくる。 「あっ、笑ってるのは今の内だよ!  覚悟しないと痛い目に合うんだから」 「わかった、わかった……ごめん、ごめん」 「じゃあ頑張ってねぇ……あは知らぬが仏」 聞いたことないくらい冷たく低い声でそう言い放ったツクはブツッと電話を切った。 ‘‘本気で怒ってはないけど、気をつけてなぁ’’ なんて、すぐ送ってくれるところに温かい優しさを感じる。 「おいで屋って色んな人がいるなぁ。今日も楽しみにしなくちゃ」 僕はつぶやいた後、キッチンのスタンドにスマホを置き、今日のバナナスムージーにどんな果物をミックスしようかと考えながら冷蔵庫へと向かった。

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