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綺麗だ
「あーぶくたった、にえたった。にえたかどうだか、たべてみよー」
‘‘今から行くにゃら’’
『\おいで屋/』から来たけどたぶん関くんからだから、アクを取り、溶き卵を入れてかき混ぜる。
「関くんのあだ名何しようかな」
きっとイケメンなんだろうなとか抱くのか抱かれるのかとか今から来る‘‘友達’’を待ちわびる。
「無理はさせないように、が1番だけどね」
なんの特徴もない僕を癒してくれるなんて……奇跡なんだから。
なんて暗いことを考えてるうちに薄い黄色の巾が舞い上がったのが見えて、火を止めた。
「むしゃむしゃむしゃ」
つけたようにまた歌を歌い出して、お椀に注いだ汁を飲んでみる。
つみれの中に入れた貝ひもの出汁の旨味が利いているから、めんつゆと鶏の出汁が薄くてもグングン飲めるんだ。
「もうにえたな」
野菜も食べたらしゃきしゃきしていたから、簡素だけど、悪くない味でひとまず安心した。
ポリ手袋をかけた手でネギとごま油の中にささみを入れ終わってすぐに、ピンポーンとチャイムが鳴った。
「グットタイミングだな」
そうつぶやいて、はーいと叫びながら玄関に走っていく。
玄関のドアをゆっくり開けると、僕より背の高い男性がスッと立っていた。
目まで覆うくらいの長い前髪が黒いのと対照的に白い肌、女性のようなふっくらと厚い唇に目を奪われる。
綺麗だと……純粋に思った。
「関本 と申します。お世話ににゃります」
鼻声でそう言い、90度のお辞儀をした彼を見て、あだ名は決まった。
気に入ってくれるといいなと思って、彼の前髪にキスをした。
「な、に……?」
その声でやっと離れると、前髪の間から見えた目が揺れていた。
「おかえり、キヨ。ご飯出来たから来てよ」
僕は穏やかに笑い、キヨの手を取る。
「キヨ……?」
「清彦だからキヨ……さっ、靴脱いで」
おずおずと靴を脱いだキヨの手を引っ張って、僕は部屋へと連れていく。
「お邪魔します」
緊張した声だけど、ちゃんと挨拶する姿にしっかりした人なんだなと思う。
「今、盛り付けるから楽にしてて」
白くて大きい手を優しく離すと、キヨは黄色のシャツの襟を正して黒いスキニーパンツを履いた膝を折った。
僕は部屋の電気をつけて、焼き鳥を電子レンジに放り込む。
「さき、飯……なん?」
戸惑ったように言うキヨ。
「ああ、ヤるの先に済ませちゃう? お腹空いてない?」
手を洗いながら言う僕に返事がない。
「イヤならいいよ。強制しないし」
なんなら、持ち帰るようにするけど?と振り向いて首を傾げる。
「……食べるわ」
前髪の間から見える目と合ったのに、すぐに反らしてため息をつくキヨ。
「すぐだから待ってて」
胃袋掴んであげるからと気合いを入れ直して、食器も持った。
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