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談笑

 「経費で落とすのは大変やけどな」 ボソッと言った先を見ると、キヨだった。 「そこはよろしゅうお願いしますわ……経理部長さん」 ニヒッと笑うマニに、はいはいと返事するキヨに唖然とする僕。 「関くんも中臣グループの一員なんやで? こう見えて」 「『こう見えて』はいらん。分福」 ふふっと笑うサガに噛みついたけど、キヨの顔は赤く染まっていた。 「じゃあ、このリムジンのレンタル代ってかなりの負担だよね?」 心配して言ったのに、みんなが氷のように固まる。 びっくりして僕も数秒思考停止したら、どっと笑いに包まれた。 豪快に笑ったり、プププと可愛く笑ったり、クククッと笑ったり。 「ハッ……だ、だい、ヒッ……ノープ、プッ! ロムレム、や……アヒャヒャヒャ!!」 一番大変なはずのマニが大笑いをしている。 「このリムジンも昨日のベンツもナンボのもんやから、大丈夫やで」 エツの言葉にやっと理由がわかって安心する。 「俺がこの前の乗せた車、ネギくんがプレゼントだしな」 白い歯を見せて笑うカイリにもう考えるのを止めた。 「ネギーのポケットマネーやから、別にええわ」 棒読みに笑うキヨの笑い方にはちょっと引いちゃったけどね。  「そういえば、キヨもエツも黒猫なんだね」 何気なく言った言葉が大喧嘩を勃発させた。 「いやいや、南はマンチカンやろ」 冷静に言うキヨ。 「ちゃうわ! セキのアメリカン・ショートヘアより高いペルシャやし!!」 意地を張って対抗するエツ。 「手足短いやん」 「毛並みは艶々やし」 「おりぇ、尻尾長いし」 ここまではキヨ優勢。 「影、薄いやん」 ニヤニヤしながらエツは言った。 「なんやねん! ああ!?」 キヨがムキになった。 なかなか見れない2人の一面が見れて、面白い。 「ちなみにプックはツキノワグマだよぉ」 「平太のハート、いただきま~す♪」 爪で引っ掻く動作をするサガになんとなく納得してしまった。  「平太しゃん、今日で20歳なんでしゅよね? ぼくちんたちの年齢も教えたらいかがでちょうか」 ふるふる震えながら言うモト。 「お前が仕切んなボケェ!!」 なぜかキレたカイリにモトはあわわわわと怯える。 「いい提案だね、モト……教えて?」 僕が優しく言うと、モトは上目遣いで僕を見つめ、うなずく。 「ぼくちんは30歳……このメンバーの中間管理職でしゅ」 「俺は前にも言ったけど、28」 「同じく28さい♪」 「僕は26歳でこのメンバーの最年少。まぁ、一番平太のこと好きやけど」 「おりぇは31しゃ……さい」 「32イヤーズオールドや」 「最年長の34やわ」 年齢は最年長が34歳のエツ、最年少が26歳のサガで、間は32歳のマニ、31歳のキヨ、30歳のモト、そして28歳のツクとカイリなんだ。 僕と14歳もエツが離れているのもびっくりだけど、サガと6歳しか離れていないのもかなり驚いたな。  あっと言う間にホテルに着き、ロイヤルスイートルームという部屋に通されて唖然とする。 昨日の部屋より圧倒的に広くて、でも淡い色で統一してあるから不思議と落ち着くような……今までにないところだった。 「平太しゃん」 立ち尽くしていた僕にモトは小豆色の首輪とハンカチを手渡す。 モトは背筋を伸ばすと同じくらいの背なんだ。 なんて思ったのに、すぐ猫背に戻り、立ち膝になる。 「ぼくちんとおしゃんぽしてくだちゃい」 その言葉に誘われた僕が目を細めたモトの頭にある犬耳を撫でると、モトは本当に感じているかのように目を閉じて口角を上げた。 汗だくの顔をおでこから顎まで流れるようにハンカチを滑らせ、首も両側を丁寧に拭く。 「暑くもないのにこんなに汗かいて……媚薬でも飲んだ?」 意識していないのに出た言葉攻めに自分で驚いたのに、モトは頬を光らせてえくぼを出した。 「平太しゃんのことを考えるだけで、びちょびちょでしゅ」 気持ちいいのか、湿り気のある吐息を漏らすモト。 「イケない子だな、モト……そんな子はしつけが必要だ」 首輪をゆっくりと通した後、強く上に引っ張ってキスをする。 クチュ……クチュ 息を吸わせないように口の中を暴れ回る。 バンッ 一気に離すと、モトは大きく蒸せながら倒れ込んだ。 荒い息が切れた声がして、一瞬青ざめたんだけど。 「平太しゃんすごい……ぼくちん、幸せでしゅ」 トロンとした瞳で僕を見て、よだれを拭くモト。 僕は愛おしくなって、駆け寄ってすぐに強く抱き締める。 「だから好きなんでしゅよ、平太しゃん」 ありがとうございましゅと言っておでこにキスをしてくれるモトをより愛おしく思った。

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