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個性
「黒くなる前に、黒のカラーリング首まで塗って痒くさせんぞ、ゴラァ」
見たことないけどヤクザを怒らせたらこんな感じなんだろうなと思うくらい眉間に皺が食い込み、歯を食いしばるカイリは……一番怖い。
「ごめん、イヤな思いさせたよな? ちょっとこっちに避難しような 」
僕らを見たカイリは目尻が垂れ下がって、口を尖らせた可愛い顔をしていて、僕らを反対側へと連れていく。
二口コンロの右側は六角形の芋頭と丸形の大根と花形の人参、白滝と牛蒡がめんつゆで煮られている。
カイリは左側のコンロに置かれたフライパンでたくさんの野菜にうどんを入れ、ソースをかけて炒め始めていた。
「これって、かあちゃん食堂の里芋煮と焼きうどんみたいだね」
かあちゃん食堂はカイリに連れていってもらった家庭料理屋さんで、そこのカヤかあちゃんは面白いし、美味しいしでよく覚えている。
「今日のために教えてもらった……カヤかぁもへいたんのこと、気に入ったみたいだしな」
カヤかぁと同じ味にはたぶんならないけどなって言いながら首を掻く仕草が照れ隠しなのを僕はやっと気がついた。
「カイリの味って新鮮だから、僕は好きだよ」
褒めてみたら、まぁなって言って強く掻いたから僕は静かに笑った。
「もうすぐ出来るから、盛り付けてある大皿2つ持っていってくれるか?」
自分の頭を撫でながら言うサガにわかったと返し、僕は赤福神漬けとらっきょうの甘酢漬けとチョロギのキムチが盛ってあるの持つ。
モトは人参カラムーチョサラダとキクイモのチップスが盛ってある大皿を持って部屋を出た。
4人がいた部屋に戻ると、大きいチョコケーキが目立つところに置いてあった。
大皿を置いてからそれを真近で見ると、僕にそっくりな似顔絵が描かれていて、綺麗な綴りで‘‘Happy Birthday Dear HEITA’’のプレートが立っていた。
「それ、あが描いたんだよぉ」
いきなり飛びついてきたツクは前歯を出してニヒヒと笑う。
「本当はひよこにしようとしたんだけどね、わかりにくいから却下されちゃったのよぉ」
「ひよこ……?」
全然わからない相変わらずのツク語に首を傾げると、バカだねぇ、なはと初めて言われた。
「卵から孵化したヒナは初めて見たものが鳥じゃなくても親だと認識しちゃうんだって……それってエッチ知らなかったへいちゃんがあ達と抱いたり抱かれたり出来るのと同じだよね?」
ああ、そうか……そうだよな。
ストンと物がハマった感じがして、これが腑に落ちるってことだとわかった。
わかった?と言われたから、大きくうなずくと、モトの紐を奪われる。
「ちょっと嫉妬しちゃったんだぁ、あの大事なミツ……返してもらうね」
狂気の瞳で僕を見てから、目の前でモトと深いキスをするツク。
クチュ……クチュクチュ
「ハアッ……アッ、ァア……」
トロけるような瞳に一瞬でなるモトにこれは敵わないなと思ってしまった。
サガとカイリも来たから、僕の誕生日パーティーが始まった。
お酒が飲めるようになった僕のコップには焼酎が注がれ、ワインやビール、緑茶割りとみんなお酒を注ぐ。
みんながハッピーバースデーを歌ってくれて、僕が火の付いたろうそくを吹き消すという誕生日パーティーならではの約束事もあっという間に済ませ、乾杯をした。
何気ない話でも笑い飛ばして、とにかく楽しむみんなを見て僕も楽しいんだ。
僕にとっては初めての誕生日パーティーだし、なにより20歳をみんなで過ごせるなんて夢みたいだな。
でも、料理を食べながら勢い良く飲んでいくみんなと違い、大人の苦味と急性アルコール中毒になりたくないのでチビチビしか飲めない僕。
「ちょいとこのコップ貸してな?」
僕の手からコップを取ったのは……キヨ。
ぶどうジュースを加えて、白くて長い指で混ぜる。
「やっぱ最初はジュースぐらい薄くなきゃあかんよな?」
ほいと渡されたから、ありがとうと言って手を伸ばした……はずなのに。
キヨは一口、口に含んで僕を抱き寄せ、そのままキスをした。
ジュル
唾液とともに流れた液体はぶどうの甘さとキヨの優しさで苦味はもうなくて、もっともっとと舌を絡ませる。
チュッ、チュッ……チュプン!!
キヨも舌を絡めてきて、離れた時には銀色の糸で繋がった。
「俺の夢、叶ってもうた」
低い声の元……左手にチーズ、右手にワインを持ったサガが満足そうに笑っていた。
「今日はヤる予定はナッシングやったけど、やっぱりな?」
マニの言葉でみんなは顔を見合わせてうなずく。
「ちょっとだけやから、ええよな?」
エツにお姫様だっこされ、別の部屋へと移動した。
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