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少しだけ時間くれる?

 次の朝、特製のバナナスムージーを飲みながら言われた通りにアパートの住所をメッセージで送る。 すぐに既読になり、うさぎがY字バランスをしたスタンプとお辞儀をしているスタンプが連続で送られてきた。 「ゆるいな……じゃあ、こっちもゆるいのを」 僕は丸いキャラがお辞儀しているスタンプを送り、スマホを閉じる。 「さっ、いこう」 リュックを背負ってニッと笑う。 ああ、今日は楽しくなりそうだ。  バイト終わり、なにも買わなかった僕は頭の中でカッチリスーツを着たザ・イケメンがフルコースを作ってくれるのを想像しながら大通りを歩く。 『平太、僕のフレンチ食べてくれる?』 大丈夫、なんでも食べるから。 今日だけだから。  「あっ、おった!」 突然、大きな声が聞こえて前を見ると、黄色いパーカーに赤いズボンを履いた男性が手を振っていた。 右手に黄色いランチバッグを持っているのに、軽くスキップをしながらこっちに向かってくる。 「はじめましてぇ……佐藤平太くんで合ってるやんなぁ?」 ふわふわな関西弁に低い声……昨日話してたサガに間違いないんだけど。 黒いナチュラルマッシュの髪型、左耳にはシンプルなリングピアス、鳶色の瞳に鼻筋がスッと通っていて、三日月状に上がる口角がステキ過ぎて思わず固まる。  「えっ、もしかしてちゃうかった?」 今度は首を傾けたのがかわいくて、ギャップにやられる。 「いや……合ってます。はじめまして、福岡サガさん」 僕はオドオドしながら言って、ぎごちない笑みを浮かべる。 「はじめましてぇ……昨日ぶりやんなぁ。今日よろしくね」 サガはさっきとは違うふわりとした微笑みを返してくれた。  「ホストってスーツのイメージだったんだけど、私服なん……だ」 僕の純粋なイメージを伝えると、最初は頭の上に?マークを浮かべてたものの、すぐに弾ける笑みを見せた。 「ああ、間違ってはないよぉ……でも、気楽な方がええんかなって」 サガはんふふと笑いながら、後ろに手を回してフードを被る。 そこには真顔のひよこの顔が書いてあり、それによってサガがこの服を着てきた意味がわかって思わずニヤッと笑った。  「あっ、やっとわかったんやろぉ」 笑顔で僕を見つめてくるサガ。 「福岡といえば?」 「とんこつ」 「とんこつといえば?」 「ラーメン」 「ラーメンといえば?」 「チキン」

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