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episode 3

窓際の席で、校庭に咲く桜を眺めていた。 今年も綺麗に咲いたな、なんてぼーっと考えていると、開けられていた窓から風が入り込み、薄い白いカーテンを揺らした。 その反動で自分にふわり、と掛かったが避けようという気さえおきない。 「(かなめ)?…ったく、何やってんだ」 「…(りょう)か。おはよう」 俺の事を名前で呼ぶのは名倉しかいない。 俺もまた、名前で呼ぶのは名倉だけ。 名倉は俺に掛かったカーテンを取って、窓を閉めた。 心地良い風だったのに。 「おはよ。お前なぁ…、なんで一人で行ったんだ?」 「あぁ、…ごめん。ちょっと一人になりたくて」 「ならそう連絡しろ。心配するだろうが」 名倉は呆れたようにため息をついた。 けれど名倉が心配性な事は知っているし、こういう時よくため息をつくのも知っている。 「うん、気をつける。ごめんね」 「もういいから、謝るな」 名倉とは高校も同じで、出会ったその日からずっと一緒に登校している。 今朝はなんだがずっとぼーっとしていて名倉に連絡するのも忘れていた。 また心配させてしまったな。 「髪、だいぶ伸びたな」 肩にかかりそうな黒い直毛をさらりと名倉の長い指が撫でる。 「見苦しい?」 「…切った方がいいな」 「わかった。凌がそう言うならそうしようかな」 俺は自分の髪を見て、名倉に軽く微笑んだ。 名倉はかっこいいんだけど、あまり笑わないしいつも怒っているように見えるから、皆きっと近づきにくいんだろうと思う。 「凌はさ、ずっと俺の友達でいてくれる?」 その言葉は純粋なもので、他意なんてこれっぽっちもない。 友達が名倉しかいない俺のちょっとした不安からきたもの。 「……ああ」 名倉は俺をじっと見つめて少し微笑んだ。 その微笑みに苦しそうな、どこか辛そうな感情を感じたのはきっと気のせい。

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