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episode 4

突然の報告だった。 「母さんが亡くなった」 報告をしてきたのは7つ年上の兄だった。 学校でその報告を受けた俺は急いで教えてもらった病院に行ったが、白いベッドの上で顔を布で覆われた人の横で兄が泣いていた。 布を外せばいつも見ていたあの優しい顔のまま眠るようにして目を閉じたままの母の姿があった。 声も出なかった。悲しいのに涙も出なかった。 死因は突発性心不全。 生まれつき心臓の病気を患っていた母は体弱かったが、その笑顔と言葉だけは元気で、辛い事があってもいつも元気づけてくれた。 それは何があっても絶対忘れない。 忘れてたまるか。 母はシングルマザーで俺たち兄弟を育ててくれた。 父の事は知らないし、見たこともない。 母は自分から話すことはしなかったし、俺も聞く勇気はなかった。 Ωだった母から産まれたのはΩの俺とβの兄。 兄は家を出て都会で結婚をして暮らしていたが、俺と母を心配して月に一度は顔を見せていた。 今日はたまたまその日だったのだ。 「要、俺のところに来ないか?(あや)もいるし、その方がずっと安心だろ。せめて高校を卒業するまででもいいから」 彩とは兄の奥さんの名前。 一週間が経って少し落ち着いた後、兄はそう言った。 「俺の気持ちがわかるだろ?Ωの弟を一人で暮らさせるなんて心配で頭がおかしくなりそうだ」 「兄さんは大袈裟すぎる。俺は一人でも大丈夫だよ」 Ωのフェロモンはαとβを誘惑してしまう。 だがそれは家族だけは例外。 「それに、凌もいるんだし」 「凌に任せてなるものか!あいつはαだ。要、いいかよく聞くんだ。αは理性が無くなれば本能でしか動けなくなる生き物だ。凌だってお前が発情期になってしまったら、」 「そんなはずない!凌だけは…酷い事するはずないんだ」 俺は兄の言葉を遮って声を荒げた。 滅多に大声を出さない俺の珍しい様子に兄は驚いているようだった。 「要……。一日だけでも、もっとじっくり考えてほしい。考えが変わったらすぐに連絡してくれ」 「……」 そう言って部屋を去る兄の後ろ姿はどこか悲しそうだった。 どうすればいいのかわからない。 どうするのが一番で正解なのかわからなかった。

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