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episode 6

✳ 逢沢side ✳ 兄が去った後の部屋はあまりにも静かで退屈だった。 部屋を出てリビングへ向かうと、テーブルには夕飯と「ちょっと出かけてくる。ちゃんと食べろよ」という置き手紙があった。 明日兄は帰る。 それまでに答えをはっきりさせないといけない。 不意にインターホンが鳴った。 映像に写ったのは名倉の姿だった。 たった一週間しか経っていないのに、なんだかすごく久しぶりに感じる。 「凌、来てくれたんだ」 「…ああ…悪い、心配で」 「もう落ち着いたから大丈夫だよ」 初めて見るような、気まずそうな表情だった。 「飯ちゃんと食ってるか?」 「うん。今は兄さんがいてくれてるから」 「…そうか。それなら安心だな」 大丈夫そうな俺を見て、名倉は安心したように微笑んだ。 すぐに帰ろうとしていた名倉を立ち話では疲れるから、と家に上げた。 一人が寂しかったというより、まだ名倉と話していたかった。 「…兄貴は出掛けてんのか?」 「うん。少ししたら帰ってくるって」 そう伝えたと同時に、体が自分より大きなものに包まれる。 突然の事で一瞬何が起きたのかわからなかった。 「……名倉?」 優しいけれどしっかりと抱き締められていた。 太陽の暖かい匂いがして、安心する。 「もういいよ、大丈夫だから。頑張ったな、お前はすごく偉いよ」 「え、……」 「我慢してたんだろ。ここには俺しかいないから」 子供をあやす様に背中を優しく撫でられて、優しい声でそう言われて。 ずっと我慢していた涙が自然と流れ出すのにはそう時間は掛からなかった。 溢れて溢れて、止まることを知らない。 息が上手く出来ない程に泣いて、何度も嘔吐いた。 凌の肩を濡らしてしまう事にも気づかないで。 暫くして落ち着いた頃、名倉は水と冷やしたタオルを持ってきてくれた。 「目、冷やした方がいい。明日腫れるぞ」 「……ありがとう」 散々泣き腫らした顔はぐちゃぐちゃで、声も枯れていた。 「……これから一人で暮らすのか?」 俺に背を向けた名倉は聞きづらそうにそう切り出した。 「…兄さんが一緒に暮らさないかって…」 名倉は何も言わなかった。 もし俺が兄と一緒に暮らす事になれば、名倉と離れる事になる。 こんな事で胸が苦しくなるのは、友達として普通なのだろうか。 でも、名倉と離れるのは嫌だと心が言っている。 「でも、俺はここに居たいと思ってる。……凌と一緒がいいから」 「"友達として"、か?」 「……え…?」 "友達"だと言って油断していたのかもしれない。 ずっと一緒にいるのがいつの間にか当たり前のようになっていて、自分がΩだということをちゃんと理解していなかったのかもしれない。 「……っ、…??」 体が燃えるように熱くなって、頭が沸騰しそうだった。

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