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episode 10

✳ 要side ✳ 意を決して凌の部屋のインターホンを押すまでには数分ほど時間を費やした。 久しぶりに見た凌は前とは全く変わっていて、まるで別人のようだった。 目の下にできた深いクマと明らかに顔色が悪い。 凌は俺の事を大切にしていてくれていたから、あんな事がおきたのは決して意図的ではないし、きっと俺の事を考えて何日か眠れなかったのだろう。 俺は食事を用意して、再び凌の部屋へ向かった。 ✳ ✳ ✳ 「……要、俺が怖いか?」 張り詰めた空気を先に破ったのは凌だった。 「そんなことない…!確かにあの時は凌が凌じゃないみたいで驚いたけど、凌に触られるの…嫌じゃないって思ったんだ…」 よくよく考えてみれば"そういう事"を致してしまった訳で、思い返すと顔が熱くなってしまう。 やっぱり嫌じゃないと再確認した。 「俺は…凌が好きなんだ…」 ぎゅっ、と皺になるくらい服を握り締めて声を絞り出す。 言ってしまった。 けど、伝えてしまわないとどうにかなりそうだった。 「………」 何も返事が返ってこない様子に、やっぱり迷惑だったんだ、なんて思いながら恐る恐る伏せていた顔を上げる。 「……それ、本当か?」 急に視界が真っ暗になって、凌に抱きしめられているという事を理解したのは数十秒後。 「…りょ、凌…?」 「…っごめん!…俺は…お前がずっと好きだったんだ」 優しい凌の香りがする。 心臓の音が痛いくらい聞こえる。 「…え、…?」 理解が追いつかなかった。 凌は今、好きだと言った?俺の事を…? 「本当は初めて会った時からずっと…お前が好きだったんだ。でもお前を困らせたくなくて、ずっと気持ちを隠してた」 表情は見えなかったけれど、苦しそうな声だった。 「気の迷いかもしれない。あんな事があったからかもしれない。…けど、お前に好きって言われて喜んでる俺がいるんだ」 「…気の迷いなんかじゃないよ」 それだけははっきりとわかった。 一緒に居ることが当たり前になっていて、今まで気づかなかったのかもしれない。 "好き"という気持ちが俺にはわからなかった。 けれど、この胸の苦しみはきっとそうなのだろうとわかる。 「…凌の事考えると胸が苦しくなって、会いたくなって…今こうして触れられてるとすごく嬉しくって、満たされるんだ。…これは"恋"じゃない?」 俺は答えるように、凌の背中に腕を回した。 「……好きになってくれてありがとう。もう誰にも渡さない」 そんな言葉さえも嬉しくて、俺は「うん」と頷いた。

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