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episode 11
「それ、兄貴から貰ったのか?」
凌は自分の首元を指さして、俺に問う。
「あぁ、うん。これがあったら噛まれる心配ないって」
「…そうか。その方が安心だな」
あの日から一週間程経って、俺達はまた普通に学校へ登校している。
チョーカーを付けたことによって周りの目が少し気になったが、凌といれば何も怖くないと思った。
凌とは恋人になったのだが、あれから触れたりはしてこないし、なんなら前よりぎこちなくなった気がする。
「凌、今日食堂行く?」
「いや、持ってきた」
「そっか、ちょうどよかった。俺もお弁当持ってきたから一緒に食べよ」
こうして授業以外は一緒に過ごしている。
「……っ、!」
弁当を取り出して、蓋を開けただけ。
突然吐き気が襲ってきて、椅子から崩れ落ちた。
「…要…!?」
思わず口を覆ったが、吐きたくても吐き出す物がない、そんな状態だった。
俺は凌に背中をさすられながら、ちょうど近くにいた教師に保健室へと運ばれた。
✳ ✳ ✳
少し眠っていたらしい。
目を覚ますと真っ白なベッドの上で、少し収まってはいたものの、吐き気と頭痛が続いていた。
「要っ、大丈夫か?」
「…凌、大丈夫だよ」
凌は凄く焦ったような顔で目覚めた俺の手を握っていた。
「要、悪い…。全部俺が悪いんだ」
「凌?…どうしたの?」
「さっき先生に聞いたんだが、…お前が妊娠してるかもって…」
「……え、」
"妊娠"。
あまりに聞き慣れない言葉に暫く思考が停止する。
この吐き気と頭痛は所謂"つわり"から来ているものだった。
原因はわかった。
あの時、2人とも発情期 にあてられて我を失っていたから避妊なんてものはしていないし、眼中にも無い。
ましてや、自分がそんな立場になるだなんて微塵も思っていなかった。
「……俺の中に、赤ちゃんがいるってこと?」
「…そうだ」
俺は自分のお腹を触って、考える。
ここにいるのは俺と凌の子。
凌との、子供。
まだ番にもなっていない。
あの日の出来事は事故で起こった事だったが、大好きな凌との子供だと思うと嬉しさがじわじわと込み上げてきた。
「……嬉しい。俺、嬉しいよ」
雫が頬を伝って流れ落ちる。
あぁ、俺泣いてるんだ。
「凌との子、俺…産みたい」
「…要、本当か?」
「うん。…でも、学校は…」
とは言えまだ高校生なわけで、本格的なつわりが始まれば学校にもまともに行けなくなるだろう。
そうなれば卒業も危うくなってくる。
それに、兄にはどう報告すれば良いだろうか。
「俺は今からでも学校やめて働くつもりだ。こうなった以上ちゃんと責任はとる」
「凌…」
嬉しい反面これからの事を考えると不安も沢山あったが、凌となら何でも乗り越えていける。
そう思った。
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