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episode 14
「…ずっと顔色悪いぞ、何かあったなら話してくれないか?」
食事の片付けが終わった後、ソファに並んで腰をかける。
凌は俺の顔を覗き込むようにして様子を伺いながら、俺の額に手を当てる。
「熱は…無いみたいだが、」
「……言われたんだ」
俺は唇をキツく引き結んで、覚悟を決める。
「名倉の事が好きっていう女の子に、番になるなって」
「…あぁ、あの逃げた女か。そんなの俺達の自由だろ」
「わかってる。わかってるけど…」
こんな事、とっくに覚悟していたはずなのに。
「Ωは世間から冷遇されてる。それは俺と一緒にいるだけで凌まで冷たい目で見られるって事なんだよ」
ずっと自分のことばかりで凌の事を考えていなかった。
「…それが何だ?」
いつもよりも少し低い声に身震いする。
凌の目はしっかりと俺を捉えていて、俺はそれから目を逸らすことができなかった。
「っだから、」
「そんな事俺には関係ない。例え冷たい目で見られたって構わない。だっておかしいのはそいつらだろ?俺たちは何も間違った事はしてないんだから。…俺はお前だけがいれば幸せだよ」
しっかりと俺を見据えて、はっきりと告げられた言葉は俺を安心させるのには充分だった。
「…俺もっ、うぅ…凌がいたら、…幸せ」
優しく凌に抱き寄せられて、安心する匂いに包まれながら俺はまた泣いた。
今度は違う。嬉しい涙だ。
「…大好き…っ、」
何度もしゃくりあげながら言葉を繋ぐ。
そんな俺を落ち着かせるように凌は背中を優しく擦ってくれた。
「なぁ要、これからは辛い事も悲しい事も嬉しい事も、全部俺に分けてほしい」
「…凌、」
「なぁ、ずっとお前と一緒にいたいんだ。…これからの人生を俺と一緒に生きてくれないか?」
頬に優しく手を添えられて、凌の胸に埋めていた顔を持ち上げて目を合わせられる。
涙で滲んだ視界はぼんやりと凌を捉えた。
「…っ、うんっ!俺も凌と生きていきたい…!」
嬉しくて微笑んだ時に、また雫が頬を伝った。
今度は違う。嬉しい涙だ。
笑っている凌を久しぶりに見た、なんて思いながら苦しいくらいに強く抱き締められて、俺も負けじと抱き締め返した。
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