抱き締められていた体が解放されて、凌の温かい手が頬を触れる。 見つめ合って、そのまま引き寄せられるようにして優しく唇が重なった。 触れてすぐに離れていく唇に物足りなさを感じながら、再び目が合う。 凌の瞳が先程と違い、熱を灯すのを感じて思わず目を逸らした。 それを許すまいと後頭部に回った手に、ぐいっ、と引き寄せられてもう一度唇が重なった。 ｢んぅっ｣ 先程の優しいキスとは違う濃厚なキス。 何も構えていなかったため、あっさりと侵入してくる舌に翻弄されながら酸素を求めて凌の胸を叩く。 それに気づいて一度離れてくれたが、すぐに角度を変えてまた塞がれる。 歯列をなぞり、舌を絡め取られて上顎を舐められれば腰から背中にかけてゾクリとした快感が駆け抜ける。 気持ちいい。こんなの今まで感じたことがない。 ｢ん、…ふぅ…、ふ、ぁ｣ くちゅ、と絶え間なく水の音が耳に響いて、それが更に俺の羞恥を掻き立てる。 ｢っはぁ｣ やっと解放された時には息も絶え絶えだった。 ｢…そんな顔、俺以外に見せるなよ｣ 口には出せなかったが、こんな事したのは凌が初めてだし、今後凌以外とはするつもりなんてない。 ｢……りょ、りょう、｣ 息が整って来た時、凌の手がシャツの下から肌に触れる。 凌とこういう事をするのはこれで二度目。 しかも一度目はあんな形だったから、素面だというだけでどうしようもなく恥ずかしかった。 思わずシャツに潜る凌の手を掴む。 けれどそんな軽い抵抗は虚しく肌を滑る迷いのない手はまだ芯を持たない突起に触れた。 ｢んあっ、……やだ、｣ やわやわと優しく触れられて尖り始めた先を摘まれると、電流が走ったような感覚を覚える。 自分の声なのか？と思うほどに口から出たのは嬌声で、思わず耳を塞ぎたくなった。 何も触られていないはずなのに熱が集まっていくのは下半身で、無意識に太腿を擦り寄せていた。 それに気づいた凌はゆっくり下腹部に手を伸ばした。 ｢…腰、浮かせられるか？｣ 普段よりも優しくて、甘い声が耳元で響く。 それだけで身を震わせたが、俺は恥ずかしいのにもっと触って欲しくて軽く腰を浮かせた。 あっという間に下半身を露わにされて脚を広げられると恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだったが、羞恥を感じる間もなく伸びてきた凌の手に後ろを触られる。 ｢んんぅ、！｣ もうそこはぐちゃぐちゃに濡れそぼっていて、指をすんなりと受け入れてしまう。 その指は丁寧で優しくて、嫌でもはっきりと動きが分かる。 ｢…痛かったらすぐに言ってくれ。優しくするから｣ 入口の浅い所をゆっくりと拡げるように凌の長い指が行き来するのを感じる。 もっと奥まで欲しい、それ無意識の事で。 ｢腰、動いてる｣ 耳元でそう指摘されて、大袈裟に肩が揺れる。 顔に熱が集まって、鏡なんて見なくても赤くなっている事がわかる。 それでも優しく触れてくれるのは、彼なりの気遣いなのだろう。 ｢……匂い、濃くなってる。…なぁ、…これ外してくれないか？｣ カチ、と金属に歯がぶつかる音がして動きが止まる。 噛んでほしい、凌に。 凌と番になりたい。 震える手でチョーカーに触れると、カチャ、という音がしてチョーカーが外れる。 それを待ち望んだかのように凌の手が首にかかった髪を優しくかきあげて、唇が触れる。 生温い感覚が這って、歯が立てられた。 ｢い、っあぁあ〜〜！｣ "痛い"というより電流のような快感が走って、目の前がチカチカした。 "気持ちいい"。 知らない、感じた事の無い感覚が体中を駆け抜けて、一気に脱力する。 ぽわぽわと熱に浮かされた頭ではもう何も考えられなくて、そのままベッドに身を預けた。 ｢…このまま寝ていいぞ｣ どっと襲ってきた睡魔に勝てるはずもなく、優しく頭を撫でられながら目を閉じた。