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vii ②
──これが所謂サディズムなのか。先程から俺のなかで暴れているのはこいつだったのか。
目をキョロキョロさせて口をつぐむ冬真に、ちょっと意地悪をしかける。
「夕べ、お前は俺に全部くれるって言ったよな。だったら、教えろよ。俺は知りたくてたまらねぇんだけど」
「……春って意地悪だったの?」
「さぁな。どっちにしたってお前の、冬真のせいだ」
冬真はしぶしぶ、と言う感じでポツポツと告白しだした。
「あのね……夕べ、春樹がしてくれたように自分でしてみた」
「夕べ俺は、どんな風にしたっけ? こうだっけか?」
脇腹を滑らせた指先を胸元へやるも、わざとらしく頂点を避けて撫でる。冬真はじれったそうに顔を歪め、春樹の指先を誘導するように体をくねらせる。
「悪いな、夕べは興奮してたから、俺がどうしたが覚えてねぇんだ」
勿論、これも噓である。
「……してみせろよ。俺が出勤したあと、持て余した体をどうしてたんだ?」
焦らした事ですっかり熱い息を吐く冬真は、さして抵抗もなく自分の胸元へ手をやる。
「んっ……こうして……春が触ってくれたでしょ? ここ……何て言うんだっけ? ジンジンしたから……」
「……気持ちいい、だろ?」
「あ、そうそう、気持ちよかった……」
言いながら、冬真は自分の乳首を捏ねる。ちらちらと春樹の顔色を伺いながら、指先に力をこめる。
「けっ、けど、春がしてくれたみたいには気持ちよくなくて、だから、ここ……触ってたんだけど……わっ」
冬真はおずおずと下腹部に手を伸ばす。春樹は体制を変えて冬真を解放し、足元にあぐらで座れば、冬真を正面に座らせ、脚を大きく開かせる。
春樹からは局部が丸見えになる格好だ。
「春、春っ、やめて、恥ずかしいよ」
「こうしないとよく見えないだろ? 大丈夫、恥ずかしい事なんかじゃねぇから」
「そう……なの? でも春はやらないって……」
「俺がやらないだけで、皆やってる。ほら、続きは?」
もっとも、皆人には見せていないだろうが。
冬真は相変わらず顔を真っ赤にして、硬くそそり勃った己を握る。小さく嬌声を漏らすものだからつい手伝いたくなってしまったが、ここはぐっと堪える。
はじめは、膝を閉じ恐る恐る、といった体で力なく握っていたが、それではやり辛かったのだろうやがて脚を開き上下に擦りだし、しばらく見ているとそれは段々激しくなっていった。
「あっ、うっ……さ、さすがに、自分じゃ舐めれない、からっ……こ、して……たんだけど……」
「それで……?」
「けど、春が、してくれた程、気持ちよくなくて……」
「……こっちは? 俺は、ここも触ったりした記憶があるんだけど」
「あっ!」
そろりと双丘の間に指を滑らせると、冬真は期待に腰を浮かせる。
しかし春樹は後腔には触れず、双丘を揉みしだくに留める。
「なぁ、ほら、どんな風にいじったんだ?」
冬真は更に腰をくねらせ、もどかしそうに呻く。春樹は双丘から手を放し、かわりに冬真の手を後腔に誘導する。
「触ってみた? 痛いっつってたから、流石に入れなかったか?」
聞こえているのかいないのか、冬真は誘導された手を黙ってもぞもぞとさせている。
時折呻くように息を漏らし、気付けば懸命に自身を擦っていた手も止まっている。
「……ったんだよ」
「ん?」
やがてぼそぼそと口の中で呟くので耳を口元によせると、冬真は両手で顔を隠して泣きそうな声で訴えた。
「気持ちいいところに届かなかったんだよぉ……だから春にして欲しい」
春樹は上着を脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンが取れるのも構わずむしり取り、冬真を引き摺り倒し抑え込んだ。
獣は鎖を引きちぎり、鋭い爪で獲物を囲い、唾液をたっぷりと纏いぬらりと光る牙はその首元に狙いを定める。耳に入るのは、己の荒い息づかい、破れそうな程激しい鼓動、そして獲物の、期待に濡れた息の音。振り切れんばかりに反り立った尾は、獲物を蹂躙する瞬間を待ちわびている。
無知な冬真は、恥ずかしがりながらも正直に応える。その姿が、声が、仕草が、匂いが、総てが春樹をたまらなく興奮させる。
「どうして欲しいんだ? 冬真がして欲しいようにしてやる」
もっと恥ずかしがる顔が見たい。
冬真の総てを自分にしたい。自分の総てを冬真にしたい。
顔を真っ赤にして、冬真は真夏のようにびっしりと汗をかいて、白銀を濡らす。冬真は震える腕を春樹の首に回し、喉の奥から絞り出すような声で春樹に懇願する。
「きっ、昨日みたいに……して欲しい」
「だから……さっき言っただろ? 俺は覚えてねぇんだよ」
「ここ、触って……奥の、オレの気持ちいいところ、触って」
反発するかと思いきや、冬真は言葉で伝えるだけでなく春樹の手を取り誘導してくる。今春樹がしたことを真似しているのだろうか。それとも、冬真も頭が沸騰しているのだろうか。
「オレも、自分じゃ届かないからわかんない……春だけ知ってる、オレの気持ちいいところ……」
こんなの、理性を保てと言う方が無理に決まってる。
春樹は指に力を入れ、待ちわびているその先に侵入する。冬真が小さく呻き、同時に春樹の指を締め付ける。
よくもまぁ、こんなところに春樹を受け入れたものだ。
「あうっ」
「痛いか?」
「へーき……もっと奥、ビリビリするとこ、触って」
浅い場所をほぐしていた春樹は言われるままに深くに指を潜らせる。すっかり興奮しているらしい冬真は快感に貪欲になっているようだ。それは春樹も同じである。
「あ、うっ……うぅ、んううっ」
「オレの気持ちいいところ」に到達した春樹は指の腹でそこを押し上げる。しかし冬真は、腰を跳ねさせるものの歯を食いしばり夕べのような嬌声を聞かせてくれない。
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