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第八話「溢れていく、そして確信」

一つになっている事に悦びを覚えている感覚の隅で激しく動いてしまいたい衝動に浅野は駆られていた。けれど、溢れんばかりの愛でまだ理性は保たれている。大事に抱きたいという想いの方が勝っている。それ程までに井上への愛が溢れていたのかと思うと今まで感じていた感情の違和感等にも納得がいく。何より今まで女性でもこんなに大切そうに抱いたことが無かったことに少し驚いている。それでもこの想いは確かなものなのだ。浅野はもうそれを認めてしまっている。次いで井上が小さく言葉を紡いだ。 「もう…えぇよ…?動いてや…」 危うく浅野の理性があと少しで完全に切れてしまう所だった。無意識なのだろうか、ずっと井上の言動行動に煽られている感覚だ。同時にそれを感じるのは自分だけであってほしいと少しの独占欲も湧いていた。井上が苦痛の中で吐いた言葉を無駄にすることのない様にと、腰をゆっくりと引いていくと離さないとでも言うように柔らかく内壁が絡みついてくる。我慢が過ぎる感覚に眩暈さえ感じる。滅茶苦茶に突いてしまいたい、激しく、壊してしまいたい。そんな浅野の思考など他所に井上は言葉を再び吐息を交えて送ってくる。 「浅野、く…ん…もっと、ちゃんと動いて…?俺、壊されてもええよ?」 「…っ」 恐らく井上は心配させないようにと唇の端を上げて見せるが、その表情はどこか妖艶に見えた。喉が鳴る程に生唾を飲む浅野はとうとう理性を自ら引き千切ってしまう。 「後悔するなよ…?もう、止まんねぇから」 井上が小さく頷くのを合図に引いた腰を一気に進めて最奥を穿つ。そんな強い衝撃で貫かれては井上は堪らず仰け反った。最奥で一旦留まっていると最初は強く締め付けて来た肉壁も次第に柔らかくなっていくのが分かる。それからは何度も何度も一定のリズムで愛しさをぶつけるように壁を突き上げていく。その度に井上は苦しそうに眉を寄せながら漏れそうな声を我慢している。そんな井上に浅野は顔を寄せてねっとりと硬く閉じられている唇に浅野は舌を這わせ楽になるよう指示を与えた。 「馬鹿、ちゃんと息しろ…」 「ん…はっ、あ…はあっ…ぁあっ…」 漸くぎこちなく唇が開かれれば、堰を切ったように大きく呼吸を繰り返しながら次第に先程よりも甘さが交じる声を漏らし始める。どうやら苦痛の中で快楽が生まれ始めているようだった。より深く繋がる為に浅野は両の膝裏に腕を通し重力に従い井上を貫く。堪らないといったように悲鳴にも似た声が井上の唇から上がる。悦楽に溺れていく姿がどうにも愛おしい。浅野は理性をも押し倒して井上との快楽を貪っている。何度も最奥を穿てば、それに応えるように甘く上がる声に感情が溢れて思わず唇から想いが零れ落ちた。 「好き…だ…、…アンタが…」 「っ…あ…ん…」 井上の表情からして意識が朦朧としているようにも窺えたが、まるで浅野の言葉に応えるように何度も懸命に口付けを与えて来る。浅野はそれだけで今は満足だった。二人の気持ちさえも繋がっている、そんな気がしていたのだ。 やがて自分の限界が近付いて来た頃、先程見つけた強く快楽を感じる場所を思い切り抉る様に腰を動かし始めた。井上は善がり腰をくねらせるが、浅野は膝裏に回した腕で抱えるようにしてそれを許さない。 「…ひっ…そこ、や…ぁっ…」 「嘘つけ…イイの間違いだろ…」 井上はふるふると左右に頭を振りながら強い快楽から逃れたくても逃れられずに布越しに浅野の背に爪を立てる。いつもは痛くて疎ましく思えるその行為さえ井上に与えられる物ならこの上なく愛おしい。一つ一つの仕草、息遣い、声で想いが溢れては零れ落ちていく。感覚全てが井上で埋め尽くされていくのに悦びを感じている。浅野が意地悪な言葉を吐いても井上にとってはそれすら快楽への材料となっているのだろう、後孔が柔らかく痙攣するように締め付けては柔らかくなるのを繰り返している。堪らず何度も善い箇所を抉っていくのと同時に、井上の竿部を優しく握り込み絞り出すように扱いた。先走りが浅野の手を濡らし水音も部屋に響き始めている。お互いがお互いを強く感じていた。そして、井上の口から絶頂を訴える言葉が放たれる。 「…ぁ、さの…くんっ、もう、俺…っ」 「いいぜ、イけよ…俺も限界…」 互いの荒々しい息と乾いた肌がぶつかる音、濡れる自身を扱く音が激しく室内に鳴り響いている。 そしてついにお互いの限界が近付いていく。深く強く井上の善い箇所を抉った瞬間浅野の自身が震え白濁を放つ。浅野も共に絶頂を迎えて勢いよく引き抜き井上の自身と己のを重ねて共に扱き同じく精を放った。井上の腹部が互いの精で汚れていく様を浅野は見つめていた。 互いに呼吸を整えながら見つめ合えば、どちらからともなく唇を重ね合った。何度もお互いの唇を食みながら合間に息が零れる。何度か繰り返しているうちに漸く荒れていた呼吸も治まっていった。 浅野は少しの自信抱いていた。二人の想いは一つなのだと。自分だけがこの想いを背負っているのではないと。そうでなければ、今までの井上の反応や行動に疑問を抱かなければいけなくなる。 そしてそれは確信に変わる。 「俺は…講師でありながら、浅野君、君のことがずっと好きでした」 確かに浅野に自信は少なからずあった。それは先程の行為でやっと抱くことの出来た物。だが、いざ目の前に答えを突き付けられると頭が真っ白になっていく感覚に見舞われた。だがそれは一瞬のことで、次第に喜びの色に滲んでいく。互いに想い合っていた。それだけで浅野の心は満たされていくのだった。

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