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第一章・6
「今日、バイト代の支払日だろ? 一万でいいからさぁ」
兄の経済状態を知りながら、弟はおねだりしてくる。
仕方なく、樹里は財布を出した。
「サンキュ!」
さっとその手から、財布が引っ手繰られた。
「わぉ。3万円、入ってる♪」
弟は、その中から2枚の札を抜いてしまった。
「ダメだよ! 定期券とお薬買わなきゃならないんだから!」
「明日またATMでおろせばいいじゃん」
それからさぁ、と樹里を見る弟の眼が、欲情している。
「ヤらせろよ。溜まってるんだ、最近」
「もうお終いにしよう、って、この前言ったじゃないか」
いいだろ、と弟は一回り大きな体で樹里をぐいぐい押してくる。
そうしてベッドに放り込むと、慌ただしくジーンズを下げて来た。
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