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第一章・8

 ずるりと引き抜かれたペニスは、樹里の目の前に醜くぶら下がっている。 「舐めて綺麗にしてよ。いつもみたいに、さ」 「ダメだよ。早くナカ掻き出さないと、妊娠しちゃうかもしれないんだから!」 「ちぇッ、ケチ」  うなだれる樹里を置いて、弟は自分の部屋へ行ってしまった。 「ああ……」  涙が零れる。  もう、こんなこと、止めにしたいのに。  仕方がない。  逆らえば、父親に言いつけられて殴られる。  兄さんが、俺のこと誘うんだ。  そんな風に、事実を曲げて伝えられるに決まってる。  そう考えたところで、父から呼ばれた。 「何だろう」  どうか、また叩かれませんように。  祈りながら、樹里はリビングへ足を向けた。

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