20 / 105
第二章・10
やがて樹里は、始めと同じように両手で大切に徹のペニスを支えて口から出した。
探るような、というより、縋るような眼差し。
どうでしたか? と尋ねたいのだろう。
徹は樹里の頭に手を乗せ、髪を撫でた。
「巧かったよ。満足だ」
「ありがとうございます!」
嬉しそうな樹里の顔を見ていると、愛おしさが増してくる。
(いや、これ以上の深入りは禁物だ)
樹里は、借金のカタに手に入れた玩具なのだ。
それを忘れては、ダメだ。
恋や愛を知らずに成長してきた徹には、それらの感情は邪魔者でしかなかった。
「今後もこうやって、尽くしてくれればいい」
「はい」
しかし、邪魔者扱いにするには、徹の樹里に対する想いは甘すぎた。
溺れる気配を自分に感じ取り、わざと無機質な声を出した。
「コーヒーを淹れてくれないか」
部屋の中にドアがあり、その向こうは給湯室だと徹は言う。
「僕、カフェでコーヒーを淹れたことはないんですけど」
「構わんよ」
給湯室に入ってみると、そこはやはり広かった。
ちょっとした軽食なら、余裕で作れる設備が揃っていた。
そして、その中にはコーヒーメーカーも。
樹里は、まだ震える指先でコーヒーを淹れた。
ともだちにシェアしよう!