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第二章・10

 やがて樹里は、始めと同じように両手で大切に徹のペニスを支えて口から出した。  探るような、というより、縋るような眼差し。  どうでしたか? と尋ねたいのだろう。  徹は樹里の頭に手を乗せ、髪を撫でた。 「巧かったよ。満足だ」 「ありがとうございます!」  嬉しそうな樹里の顔を見ていると、愛おしさが増してくる。 (いや、これ以上の深入りは禁物だ)  樹里は、借金のカタに手に入れた玩具なのだ。  それを忘れては、ダメだ。  恋や愛を知らずに成長してきた徹には、それらの感情は邪魔者でしかなかった。 「今後もこうやって、尽くしてくれればいい」 「はい」  しかし、邪魔者扱いにするには、徹の樹里に対する想いは甘すぎた。  溺れる気配を自分に感じ取り、わざと無機質な声を出した。 「コーヒーを淹れてくれないか」  部屋の中にドアがあり、その向こうは給湯室だと徹は言う。 「僕、カフェでコーヒーを淹れたことはないんですけど」 「構わんよ」  給湯室に入ってみると、そこはやはり広かった。  ちょっとした軽食なら、余裕で作れる設備が揃っていた。  そして、その中にはコーヒーメーカーも。  樹里は、まだ震える指先でコーヒーを淹れた。

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