28 / 105
第三章・7
先にお風呂から上がったのは、樹里の方だった。
「寝る前に、お酒とか召し上がるかな」
だったら、僕が準備しておかなきゃ。
そう思った樹里は、リビングへ向かった。
チェストには、ありとあらゆる高価そうな洋酒が並んでいる。
「どれがいいんだろ」
すでに開いているボトルの栓を外して、その香りを試していった。
強烈な刺激臭のあるものを避け、中でも一番マイルドな芳香の洋酒を選んだ。
次は、グラスだ。
これまた色んな形のグラスが、ずらりと並んでいる。
「寝る前だから、ちょっぴりにしてもらおう」
そこで、中でも一番小さなものを選んでトレイに乗せた。
ソファのローテーブルにそれらを用意して待っていると、バスローブを纏った徹がようやく現れた。
「寝酒の準備をしてくれたのか。気が利くな」
「ありがとうございます」
ともだちにシェアしよう!