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第四章・3
「恋人もいないのに、どうしてあんなにフェラが巧かったのかな?」
苛めるように、樹里の浅いところを指で弄る徹だ。
だが、次の言葉でそのからかうような仕草は止まった。
「弟に。実は、弟に犯されてました」
ごめんなさい、となぜかここで謝る樹里が悲しかった。
まさか、弟に。
弟といえば、あれだろう。
樹里の、αの弟だろう。
高校2年生の。
「兄がΩなのをいいことに、盛っていたというわけか」
許せんな。
(来年が受験だと言ってたが、奴の志望校は全て不合格にしてやる)
「僕がいけないんです。ちゃんと、強く拒めなかった僕が」
「樹里くんは、何にも悪くない」
零れる樹里の涙を、徹は唇で吸い取ってやった。
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