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第四章・4
同じαでも、こうも違うのかと樹里は考えていた。
横暴で、自分勝手だった弟。
優しく、紳士的な徹。
どちらも同じαだが、Ωである自分に対する態度は天と地ほどに違う。
(綾瀬さんは、ヤクザなのにこんなに僕を大切に扱ってくれる)
生まれて初めて、人として。
人間として扱われている心地を、樹里は覚えていた。
「嫌なことは、忘れてしまいなさい」
そう言って、徹はローションをたっぷり使って指を入れて来た。
「ひゃッ! あぁ、あ!」
「リラックスして。肩の力、抜いて」
頑なで、固い樹里の蕾だ。
丁寧に指で解しながら、ここに無理やり捻じ込んでいた弟を呪った。
(不合格程度ではぬるいか。もう少し、お仕置きしてやろう)
「あ、あぁ。んんぅ、うぅ……」
「気持ち悦いいかい?」
「あ、いけません。僕より、綾瀬さんが……」
綾瀬さんが楽しめるように。
綾瀬さんが悦いように、僕を好きにしてください。
そんな樹里の言葉は、徹の胸に染み入った。
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